新収 東方学 第122輯2011/08/08 19:19

『東方学』第122輯、2011年7月

戸川貴行、東晋南朝における伝統の創造について―楽曲編成を中心としてみた

 渡辺信一郎氏によって掘り下げられてきたテーマである国家儀礼に不可欠な雅楽がもつ政治的イデオロギーに注目、とくに劉宋孝武帝にいたるまでの整備状況を分析したもの。またそこに付加されていった北朝期における『周礼』的要素を意識しつつ、南朝の「伝統」が南北朝隋唐政権の帝国理念の形成に与えた影響を視野に入れて論が展開される。
 南北朝隋唐論であり、中華的世界観の分析のひとつにもなっている。

 『新修本草』序例もこうした中華的世界観で書かれているわけで、個々の語彙の歴史をしるうえで勉強になる箇所もあった。

 まったく雑感ではあるが、様々な言語でまた様々な形での「史料」が増大しつつある昨今、王朝の世界観の発展やその変化によって中国史を語ることの現代的意義、またそれを「中国」に住んでいない日本の研究者が語る意義は、熟考する必要があると思っている。史書から取り出された世界観は権力の本質を分析する一視点として有効である。
 ではそこからみいだされるものが「歴史」なのか。もっと多彩な視点からその時代を描けるのではないか。その視点のおきかたを自分で考えてみることが目下の関心である。

拝受 政治空間より見た後漢の外戚輔政 ほか2011/08/08 22:35

渡邉将智、政治空間より見た後漢の外戚輔政―後漢皇帝支配体制の限界をめぐって、『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第56輯、2010年。
渡邉将智、後漢洛陽城における皇帝・諸官の政治空間、『史学雑誌』第119編第12号、2010年。

渡邉さんからいただいた。ありがとうございました。後者は先に紹介している。ともに史料と考古学的報告に依拠した「政治空間より見た」という視点が際立っている。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2011/02/10/5674168

今日は立秋だったが暑かった。某大学内はO Cでまるで高校のよう。メインストリートを歩く私に大学ロゴの入った団扇を渡そうとする大学生は、私を高校教師と間違えたのであろう。ここに来た当初は浪人を繰り返した老けた新入生にでも間違えられたか、それとも怪しい団体なのか、新歓の声をかけられたたこともあった(笑)。まあそのときも今日も喜ぶはずもなく、見る目がおかしいのではないかと相手の顔をまじまじとみてしまうわけだが。

新収 越後の大名2011/08/08 23:52

(図録)『越後の大名』新潟県立博物館、2011年7月。

現在展示中の企画展の全111頁のカラー図録。1000円もしないことに驚く。
 越後一国を統治した堀秀治そして松平忠輝の改易のあと、小藩分立となった時代を焦点に当てて企画されたもの。
 糸魚川藩、高田藩、椎谷藩、長岡藩、与板藩、三根山藩、村松藩、新発田藩、三日市藩、黒川藩、村上藩と小藩(高田、長岡、新発田、村上はそれなりの規模がある)に関する資料もまんべんなく収められている。個人的に興味のある典籍とか朝鮮、中国に関するものはないが、新潟大学所蔵資料がかなり使われており、驚く。
 何点か変わり兜の類があったりして、純粋に武将物が好きな人にも子供連れにもおすすめできそうな内容である。
 県博は長岡にあり、駅からも離れているわけだけだが、8/21まで長岡駅近くの商工会議所で「長岡藩主牧野家の至宝展」が同時に開かれているそうなので、一日かけて長岡の博物館巡りとするのが長岡市のおすすめってことなのだろう。