拝受 ソグド人漢文墓誌訳注(8)太原出土「虞弘墓誌」2012/02/13 01:11

ソグド人墓誌研究ゼミナール、ソグド人漢文墓誌訳注(8)太原出土「虞弘墓誌」、『史滴』第33号、2011年12月。

 ソグド人墓誌研究ゼミナールを主宰しておられる石見清裕先生からいただいた。ありがとうございました。隋代墓誌訳注といえども新しい北朝史研究がはじまった観がある一本。北朝史がユーラシア大陸の動きとつながっていることがくっきりとみえてくる。訳注作業に参加した院生は幸運だし、おおいに貢献もしたのであろうが、最終的にこれだけの精度のものをわずか数ヶ月で作られると、同分野で一人で研究を進める者は困惑するしかないであろう。
 おまえはなぜこれに取り組まなかったのかといわれているような気もする。この史料が出た頃、自分は敦煌医薬文献に飛び込もうとしつつあった。時間は巻き戻せないのでこれから取り組みたいとは思うけれどずいぶん高い壁である。
 これを例に挙げるまでもなく墓誌研究というのは相当なポテンシャルを持っているとおもうが、多くの場合、整理中心、正史の補助的利用になりがちであり、またその可能性ばかりを前面に出した研究費取得に重きがおかれすぎだと思うことがある。後世の歴史家にしかみえない事実とは丁寧にそして同時に視野を広くしながら史料を読んでいくことによってしかえられないことを再認識させられる。

拝受 世界史教科書掲載の霊芝雲形吐魯番文書の深層2012/02/13 01:29

片山章雄、世界史教科書掲載の霊芝雲形吐魯番文書の深層、『東海大学紀要・文学部』第95輯、2011年9月。

片山先生からいただいた。ありがとうございました。片山先生がここ数年取り組まれている龍谷大学蔵吐魯番文書(大谷文書)の分析。まさに「深層」または「重層」性をときあかす内容となっている。個人的にはこの史料については先生が提示された以外の解法はないと思うので、別の史料のお話も是非うかがいたい。

新収 新しい世界史へ ほか2012/02/13 02:48

羽田正(著)『新しい世界史へ-地球市民のための構想』(岩波新書)、岩波書店、2011年11月。
杉山正明(著)『遊牧民から見た世界史 増補版』(日経ビジネス文庫)、日本経済新聞出版社、2011年7月。

林俊雄(著)『スキタイと匈奴 遊牧の文明』(興亡の世界史02)、講談社、2007年6月
礪波護(著)『唐宋変革と官僚制』(中公文庫)、中央公論社、2011年12月。
飯島渉(著)『感染症の中国史 公衆衛生と東アジア』(中公新書)、中央公論社、2009年12月。

 いつか精読しようとおもって山積みになっていたものをリスト化しておく。
前二者は世界史を考える、東洋史を考えるうえで有効。杉山本は増補版ということであらためて購入。後三者はそれらと比すれば各論ではあるが、それぞれの分野の最新の成果がわかりやすくまとめられている。礪波先生の著書は以前、同文庫にはいった『唐の行政機構と官僚』と接続する内容でわかりやすく読めるように新稿がくわえられているが、本体は学術論文レベルの内容(卒論!も含まれる)。裏表紙に前著『唐の行政機構と官僚』への言及があるが、広告面にそれがないのは版切れになったのであろうか。

 ある中国人留学生が母国には文庫本というものがない、これいいですね、といってたが、彼がそういうのは価格もあろう。一方、自分は電車に乗らないとなかなか文庫本が精読できず、飛ばし読みをしがちである。どうやら電車によく乗る生活にあった形態なのだとおもう。
 明清期の考証モノや『唐鑑』や『郡斎読書志』の影印などまでそろった学術的すぎる台湾の人人文庫(新書サイズ)というのもあったが、その場合は省スペースで廉価、ということなのだろう。

拝受 唐代疾病・医療史初探2012/02/13 18:32

于賡哲(著)『唐代疾病・医療史初探』、中国社会科学出版社、2011年10月。

 于先生からいただいた。ありがとうございました。たまたま私の講義にでていた学生が于先生の元学生だった(日中近代史専攻の学生)ということで、彼をつうじて著書をいただくことになった。
 于先生には以前、武漢大でお会いしたことがあった。武漢大出身で、現在、陝西師範大におられる。
 本書は十三章構成。一言で言えば「中国中古疾病の社会史」とでも言うべき内容で、とくに唐代の病や薬材、その制度の「実態」に詳しく、敦煌文献なども使用しておられる。
 敦煌文献もいわゆる医薬文献を使用してというのではなく、宗教文献などをもちいて、その時代の人々がどのような疾病観をもっていたかという視点から切り込まれるなど、史料の使い方が巧みである。結果として私のように文献学的色合いでなく社会史的色合いの強い内容となっている。ご自身もお書きになっているように笵家偉先生の志向に近い感じをうけた。とても読み応えのある本なので、まだ通読できていない。ここでは紹介にとどめる。

http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/07/26/5250382

拝受 なぜ和歌を詠むのか 菅江真澄の旅と地誌2012/02/13 21:17

錦仁(著)『なぜ和歌を詠むのか 菅江真澄の旅と地誌』、笠間書院、2011年3月。

錦先生からいただいた。ありがとうございました。タイトルからは国文学、副題からは民俗学的な感触を受けるが、中を拝見すると、次のような言葉がある。

「国文学も民俗学も歴史学もそれぞれに独自に存在するが、私たちを束縛するためにあるのではない」

ここからもわかるように国文学や民俗学だけでなく歴史学の研究者からみても興味深い視点がいくつもみられる。分野のやり方がどうのというのでなく対象に注ぐ視点の置き方の柔軟さにこだわっておられるように読んだ。また秋田藩および佐竹家に関わる資料的研究としてみても興味を引く箇所が多数ある。

笠間書院の本書紹介ページ(詳細な目次あり)
http://kasamashoin.jp/2011/01/post_1653.html

Ⅰ 新しい眼で真澄を捉える
Ⅱ 真澄の旅--なくてはならない和歌
Ⅲ なぜ地誌を書いたか--藩主とのかかわり
Ⅳ 地誌を生みだす和歌