拝受 第56回 杏雨書屋特別展示会図録2011/07/12 00:57

『第56回 杏雨書屋特別展示会図録―田中彌性園文庫から見た近世大阪の医学』、武田科学振興財団、2011年4月

杏雨書屋からいただいた。ありがとうございました。全75頁の薄い展示会用図録。フルカラー。展示会時期でなくてもいただけるようである。

彌性園とは大阪に400年つづいた医家、田中氏の薬草園や屋敷などの遺跡のことでその古書籍古文書が杏雨書屋に文庫として保管されることになったということのようである。

木村蒹葭堂や頼三樹三郎、曲直瀬道三、伊藤仁斎などの近世著名人の書簡のほか、正徳刊本の『奇効良方』をはじめとした中国刊本、現存写本のきわめて少ない南宋医書や『福田方』などの写真・解説がずらりと並ぶ。

こちらの紹介が詳しい。「世界でも中国・台湾・香港を除くとたぶん100人くらいしか興味のなさそうな話」といえばそうかもしれません。
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2011/04/post-acbe.html

なお、関西遠征のついでにマニ教関連の特別展示を見に行った際、購入しようとした大和文華館の特別展図録および美術研究誌『大和文華』はすべて売り切れだった。もちろん先月の話である。

http://www.kintetsu.jp/yamato/exhibition/50th_2.html
http://www.kintetsu.jp/yamato/shuppan/yamatobunka.html

拝受 杏雨 第14号2011/07/10 00:38

杏雨書屋『杏雨』第14号、2011年6月。

(所蔵資料翻刻)
古泉圓順 『薬種抄二』

(講演録)
岡野誠、唐宋史料に見る『法』と『医』の接点
池田温、敦煌秘笈の価値
太田由佳、本草家松岡恕庵の生涯と学問
辻本雅史、貝原益軒の思想世界

(論文)
黒田彰、杏雨書屋本太公家教について
岩本篤志、『新修本草』序例の研究
橘堂晃一、清野謙次旧蔵敦煌写本の一断簡によせて
田中圭子、東山御文庫所蔵「薫物調合秘方」解説と釈文

(奨励論文)
秋月武児、紀州の本草家畔田翠山の研究
白井順、三木文庫調査報告

杏雨書屋からいただいた。ありがとうございました。
 全532頁。巻末には前号同様杏雨書屋所蔵資料(敦煌秘笈含む)閲覧の際の申請手順などが記されている。

 掲載されたいずれもが杏雨書屋所蔵資料に関係する分析が示される。岡野(羽20)、池田(特に羽63、羽27-1)、黒田(羽664)、岩本(羽40)、橘堂(羽570)が特に敦煌秘笈に関する内容。律令関係・社会経済史料・童蒙書・本草書・仏教経典とバラエティに富む。羽570、羽664は図録未公刊部分だが展示会で出品され、パンフレットに掲載されている。
 三木文庫は朝鮮医学史のみならず敦煌医薬文献研究にも大きな足跡を残した三木栄旧蔵書による。岡野講演録は前掲 http://iwamoto.asablo.jp/blog/2011/07/07/5946400 

 なお拙稿、注10)の末尾の一文は誤りなので訂正してください。L2371は新番号でなく臨2371と同じく旧番号。国家図書館蔵『新修本草』断片「旧:L2371」は現在、「BD12242」として整理されており、2009年後半に刊行された『国家図書館蔵敦煌遺書』に収録・公開済み。

新収 日本医史学雑誌 第57巻第2号2011/06/23 00:31

『日本医史学雑誌』 第57巻第2号、2011年6月

 日本医史学会総会の演題の要旨が90点、載る。

天野陽介・小曾戸洋・町泉寿郎、『医学天正記』異本類の比較研究
真柳誠、『素問』の早期版本について
楊歓、唐代『張仲景傷寒論』の検討
多田伊織、唐代の散逸医書『古今録験方』から見た六朝期の散逸医書『僧深方』
遠藤次郎・鈴木達彦、新発見の医書『江春記抜書』と田代三喜
竹内尚、聿修堂の蔵書目録について

このほかにも興味深いものがたくさん掲載される。

新収 稀見唐代天文史料三種2011/06/12 21:51

高柯立(選編)『稀見唐代天文史料三種』上中下、国家図書館出版社、2011年1月。

『天文要録』『天地瑞祥志』『譙子五行志』を影印でおさめる。前二者は日本の研究者の研究で知られる日本蔵写本。

新収 却穀食気・導引図・養生方・雑療方2011/06/08 20:25

白杉悦雄・坂内栄夫(著)、馬王堆出土文献訳注叢書編集委員会(編)『却穀食気・導引図・養生方・雑療方』 (馬王堆出土文献訳注叢書) 、東方書店、2011年2月。

待望の翻訳。これまた購入して長い時間が過ぎてしまった
 たしか十四点ほどになる馬王堆医書のうち、『漢書』藝文志の医書の四分類を適用した場合に「経方」に分類可能な『五十二病方』は既刊。講義で利用させていただいており、便利で画期的。今回刊行された内容は不老長生に重きをおくもので、おなじく藝文志の分類では「神仙」類にふくまれる。残り二分類『足臂十一脈灸経』等の「医経」類、『胎産書』・『十問』などの「房中」類をおさめる各続刊の完成がまちどおしい。
 なお、馬王堆医書については京大人文研研究班による『新発現中国科学史資料の研究(訳注篇)』(1985年)におさめられたものがあり、今回の新訳ではその成果もふまえられているようである。

http://www.toho-shoten.co.jp/toho-web/search/detail?id=4497210081&bookType=jp

新収 三国志-演義から正史へ、そして史実へ ほか2011/06/08 19:58

渡邉義浩(著)『三国志-演義から正史へ、そして史実へ』(中公新書2099)、中央公論社、2011年3月。

三村太郎(著)『天文学の誕生-イスラーム文化の役割』(岩波科学ライブラリー173)、岩波書店、2010年8月。
ダニエル・ジャカール(著)吉村作治(監修)遠藤ゆかり(訳)『アラビア科学の歴史』(知の再発見叢書131)創元社、2006年12月。

近藤好和(著)『武具の日本史』(平凡社新書539)、平凡社、2010年8月。
宇田川武久(著)『江戸の砲術師たち』(平凡社新書512)、平凡社、2010年2月。

自分が知らない世界にちょっと入り込めた気がするのが新書の類の良いところである。またむずかしい研究が平易に説明されていたりもする。長時間移動の際にでも読もうと購入。いずれも読了していない。

拝受 中古異相―写本時代的学術・信仰与社会2011/05/26 00:45

余欣(著)『中古異相―写本時代的学術・信仰与社会』、上海古籍出版社、2011年3月。

 復旦大学の余欣先生からいただいた。ありがとうございました。敦煌吐魯番文献、日本古写本、墓誌、呪術木簡(人形)などが史料として扱われている。掲載された文献等資料図版は原版が白黒のモノをのぞけばオールカラー。いただいて紹介するまでずいぶん時間がたってしまった。またいくつかの要所で拙稿を引いていただいているようである。
 結果として私の嗜好ともかぶってきた気もするが、こちらは単著が刊行できてないので(すでにまとめたのだが諸般の事情が)、後塵を拝することになった。ただ、単に後塵を拝するつもりはないので変化球(もしくは新志向)でお返しができればと思っています。

 実は既知の史資料のほとんどはまだ十分分析されていなかったり、どう分析してよいものかさえわかっていない場合も多い。データベースや目録で整理されたが・・というものが少なくないのである。余欣氏の著書はそうした史資料をどういうアングルからとらえれば、その時代の特徴がつかめるのかを試みている。またこうするのが王道だというような思い込みも威張ったところも感じられない。アイデアの詰まった著作である。

目次と概要はこちら
 http://www.sinoss.net/2011/0504/32472.html

あとがきはこちら
http://www.douban.com/group/topic/19796320/

まだまだいただきものや購入したモノがたくさんありますが、期日の迫った雑用が少なからずあるので・・・

拝受 アジアが結ぶ東西世界 ほか2011/05/20 17:54

橋寺知子、森部豊、 蜷川順子、新谷英治(共編)『アジアが結ぶ東西世界』(アジアにおける経済・法・文化の展開と交流)関西大学出版部、2011年3月。
栄新江、森部豊(訳・解説)「新出石刻史料から見たソグド人研究の動向」『関西大学東西学術研究所紀要』第44輯、2011年4月。

森部先生、栄新江先生からいただいた。ありがとうございました。
ともにいただいて半月以上が経っておりますがあらためて感謝。

前者の目次は以下のとおり。第1部は講演録のかたちで第2部は論文になっている。

第1部 関西大学3研究所公開合同シンポジウム「アジアが結ぶ東西世界」
 栄新江、イスラーム化以前の中央アジア―東西交渉史上の役割
 宮紀子、全真教からみたモンゴル時代の東西交流―和算の来た道
 Arindam Dutta、デルタと神々―帝国のピクチャレスクという景観
 羽田正、インド洋海域世界とイスラーム

第2部  論集「アジアが結ぶ東西世界」
 栄新江、イスラーム化以前の中央アジア―東西交渉史上の役割
 森部豊、東ユーラシア世界におけるソグド人の外交活動に関する覚書
 福田浩子、中央アジア・トルクメン人の民族衣装コイネクについて
 Arindam Dutta、デルタと神々―帝国のピクチャレスクという景観
 橋寺知子、インドにおける近代建築-伝統とモダニズム
 新谷英治、『キターブ・バフリエ』韻文序に見えるインド洋

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4873545226.html

後者は近年公刊された石刻史料集を精査、あらかた解説を加えているほか、どのようにソグド人の墓誌と判断するかなども記されており、必見の論文といえる。
 実は森部先生のはからいでここに扱われている資料の写真または実物をみせていただく機会も得た。なかなかたいしたものでした。

新収 博物学と書物の東アジア ほか2011/05/16 17:42

高津孝(著)『博物学と書物の東アジア-薩摩・琉球と海域交流』、榕樹書林、2010年8月。
斯道文庫(編)『図説 書誌学-古典籍を学ぶ』、勉誠出版、2010年12月。
吉田歓(著)『古代の都はどうつくられたかー中国・日本・朝鮮・渤海』、吉川弘文館、2011年2月。

昨年度、購入した書籍の山の中から。いずれも面白い本なのだが読了するにはちょっと時間が。とりあえず記録。

新収 Médecine, religion et société dans la Chine médiévale2011/05/13 20:30

Catherine Despeux / Isabelle Ang (ed.)
"Médecine, religion et société dans la Chine médiévale : Étude de manuscrits chinois de Dunhuang et de Turfan"
,Collège de France, Institut des Hautes Études Chinoises,Paris, 2010. (3 tomes sous étui, 1386 pages)

 実際は「新収」ではなく、半年以上前に購入し、今日まで紹介しそびれてきた研究書である。
 邦題にすると「中国中世における医術と宗教と社会-敦煌吐魯番漢文文書の研究」となる。全3分冊、総ページ数1381ページという巨冊。
 第1分冊と第2分冊は論文篇となっており、合計14本(執筆者9名)の論文を載せ、第3分冊は各種索引、コンコーダンス、論文目録になっている。
 これまでも敦煌占術文献であればM.Kalinowski氏の大著があり(追記:どうも本書はタイトルや執筆者からみてそれと一連のシリーズに属すとみるべきようだ)、敦煌医薬文献であれば、V. Lo & C.Cullen両先生の編著があった。しかもともに21世紀になってからの刊行であったから、こんなに短期間にこれほどの大著が出るとは予想してなかったので驚いた。今後、敦煌吐魯番の医術文献や占術文献を扱う際には避けて通れない内容と精度をもっている。

 たしか赤木崇敏さんがご自身が購入前に紹介してくださって、私は即ネットで購入。家計が苦しいのだが私費購入した。目次をみていくつかの論文をひろい読みしただけで大変な成果であることはすぐにわかった。解題されている文献が多い。さっと紹介するにはあまりにボリュームがあり、いまだに細部にまでは眼が通せていない。とりあえず新しい論文を書く際には先行研究を見逃さないよう本書をさっとみておくことにしている。
 本書刊行の前後、なぜか英語版Wikipediaの中国本草関連の記載がずいぶん充実してきていた。なぜだろうと思っていたのだが、こうした分野に関心をもって研究が進めている先生方が欧米言語圏にいたということと無関係ではなかったのかもしれない。

 特に執筆者に知人がいるわけではないが(その後、陳明先生にはお会いする機会があったが)、拙稿も僅かながら引用、参照いただいているのは光栄である。引用いただいた論文については後でかなり修正をくわえた。新稿もあるので、いつかは執筆者に送らせていただきたいと考えている。
 論文目次を邦訳して載せておきたいが、とりあえず以下のAFECのサイトから執筆者名と肩書きをコピーさせていただいた。
http://www.afec-etudeschinoises.com/Medecine-religion-et-societe-dans?lang=fr

Alain Arrault (École française d’Extrême-Orient)
Chen Ming (Université de Pékin)
Catherine Despeux (Institut National des Langues et Civilisations Orientales)
Ute Engelhardt (Université de Munich)
Fang Ling (Centre National de la Recherche scientifique)
Donald Harper (Université de Chicago)
Elisabeth Hsu (Université d’Oxford)
Vivienne Lo (Sir Wellcome Institute de Londres)
Éric Trombert (Centre National de la Recherche Scientifique).