新収 東洋史研究 第69巻4号、史学雑誌 第120編第2号2011/06/09 21:05

『東洋史研究』第69巻4号、2011年3月
 前島佳孝、西魏宇文泰政権の官制構造について

『史学雑誌』第120編第2号、2011年2月
 水間大輔、秦漢初における県の「士吏」

 前者は丁寧に先行研究と史料をすりあわせることで先行研究の認識のズレをあきらかにし、問題点を整理したうえで結論を導き出している。西魏北周政権の特異性がどこにあるのか、またなぜ西魏の官制が論じられなければならないのか、これまで見過ごされてきたのはなぜか、先行研究にひきずられることなく、明解に論じられている。
 後者はここ数十年の秦漢期の簡牘の発見によって相当な数になった史料から従来の研究では見出し得なかった諸点をあきらかにしている。

 新収と書いたがともに最近手にしたわけではなく、震災前後には自分の手元にあったはず。震災以前にも、ここ数ヶ月、ずいぶんと多くの雑誌の記事を記録しないままだった。

新収 却穀食気・導引図・養生方・雑療方2011/06/08 20:25

白杉悦雄・坂内栄夫(著)、馬王堆出土文献訳注叢書編集委員会(編)『却穀食気・導引図・養生方・雑療方』 (馬王堆出土文献訳注叢書) 、東方書店、2011年2月。

待望の翻訳。これまた購入して長い時間が過ぎてしまった
 たしか十四点ほどになる馬王堆医書のうち、『漢書』藝文志の医書の四分類を適用した場合に「経方」に分類可能な『五十二病方』は既刊。講義で利用させていただいており、便利で画期的。今回刊行された内容は不老長生に重きをおくもので、おなじく藝文志の分類では「神仙」類にふくまれる。残り二分類『足臂十一脈灸経』等の「医経」類、『胎産書』・『十問』などの「房中」類をおさめる各続刊の完成がまちどおしい。
 なお、馬王堆医書については京大人文研研究班による『新発現中国科学史資料の研究(訳注篇)』(1985年)におさめられたものがあり、今回の新訳ではその成果もふまえられているようである。

http://www.toho-shoten.co.jp/toho-web/search/detail?id=4497210081&bookType=jp

拝受 資料学の方法を探る(10)2011/04/19 18:12

愛媛大学「資料学」研究会(編)『資料学の方法を探る(10) 』、2011年3月。

陳偉、秦簡牘研究の新段階
工藤元男、「秦簡牘研究の新段階」コメント
金慶浩、韓国の木簡研究・現況
金秉駿、「韓国の木簡研究・現況」コメント
平川南、日本古代における文字使用
鈴木景二、日本古代の出土資料、伝世資料と情報伝達
佐藤信、日本古代の出土資料研究の課題
松原弘宣、古代の情報伝達と世論形成
畑野吉則、敦煌懸泉漢簡の郵書記録簡

「資料学」研究会代表の藤田勝久先生から、このプロジェクトの概要書とともにいただいた。ありがとうございました。

拝受 漢代画像石に見られる禹の図像について 他2011/04/14 23:59

友田真理、山東・江蘇地域出土漢代画像石の図像と地域性―黄河の治水をめぐって―、『中国史研究』第51冊、2007年12月。
友田真理、漢代画像石に見られる禹の図像について、『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第53輯第3分冊、2008年2月。
友田真理、江蘇省徐州市銅山県苗山漢墓墓門画像石再考、『美術史研究』第47冊、2010年1月。
友田真理、胡漢交戦図の分布とその歴史的背景―漢代画像石を中心として―、『中国考古学』第8号、2008年11月。
友田真理、山東省済寧市出土「風伯・胡漢交戦画像石」試釈、『中国出土資料研究』第13号、2009年3月。

 友田さんからいただいた。ありがとうございました。いただいて一ヶ月以上がすぎてしまった。
 前三点は基本的に「禹」を題材にした画像石の分析を主体としており、後二点は「胡漢交戦図」を中心とした分析である。美術史、中国史、神話学などを縦断する内容となっている。

拝受 戦国秦漢時代における王権と非農業民 ほか2011/02/23 19:00

柿沼陽平、戦国秦漢時代における王権と非農業民、『史観』第163冊、2010年。
柿沼陽平、三国時代の曹魏における税制改革と貨幣経済の質的変化、『東洋学報』第92巻第3号、2010年12月。

 柿沼さんからいただいた。いつもながら中国古代史における経済人類学的視点が斬新。しかし、奇をてらうことのない論証が展開される。
 たしか先日、これまでの成果をまとめた単著を上梓されたはずで、一応、同門から出た感じもある自分は、水間さんにつづいて柿沼さんにも先を越されてしまったことになる。まあ自分の低能力を呪うしかないだろう。

新収 概説中国思想史2011/02/23 18:24

湯浅邦弘(著)『概説中国思想史』、ミネルヴァ書房、2010年10月

 これまでの「思想史」とは違う斬新な視角で組まれている。とくに第14章以降に文字学、新出土文献、目録学、史学思想、民間信仰、軍事思想、日本漢学などのジャンルがたてられているのがユニーク。歴史学研究者も一見の価値がある。また編者自身の研究蓄積がうまくいかされている。

目次はこちら
http://www.minervashobo.co.jp/book/b75808.html

 刊行されてすぐに購入したのだが、すでに4ヶ月がたってしまった。その間、やることがずいぶんあり、海外にも何度も出かけ、もう1年くらいすぎたような感覚がある。こまるのは1ヶ月ほど前から突如めまいがあることで、少し休む必要がありそうだ。禁酒・禁コーヒー中で能率が上がらないこと甚だしい。

新収 三秦瑰宝 ほか2011/02/23 02:07

陝西歴史博物館(編)『三秦瑰宝ー陝西新発現文物精華』、陝西人民出版社、2001年6月。
陝西歴史博物館・北京大学考古文博院他(編著)『花舞大唐春ー何家村遺宝精粋』、文物出版社、2003年5月。
呂建中(主編)『西安大唐西市博物館』、陝西人民出版社、2010年3月。

 いずれも陝西省の漢から唐の文物を主体とした図録(後の2冊は特に唐代が中心、最後の1冊は企業出資によって建設された博物館の図録でシルクロード文物に重心を置く)
 この3冊と前掲の『絲綢之路 大西北遺珍』で21世紀最初の10年で陝西省でどれだけ多くの文物が発掘され、博物館に収蔵されたのかがよくわかる。
 とくにその内容からは中原に都をおいた政権に関する研究のみならず東西交渉の研究においても西安・洛陽の中原文物が重要な意義をもつことが感じ取れる。

新収 史学雑誌 第119編第12号2011/02/10 00:04

『史学雑誌』第119編第12号、2010年12月。

 渡邉将智、後漢洛陽城における皇帝・諸官の政治空間

 後漢の政治空間に関する論考。唐代史ではこれまでも注目されてきた分野だが、漢代では新潮流のさきがけかもしれない。漢長安城の発掘整備も進んでいるようなので、更なる進展が期待できそう。

私事ですが、ようやく復活。研究時間がない。たぶんまた沈むことになるかもしれないが、その前になんとかいただいたものだけでも紹介を。

拝受 漢長安城の骨簽に関する一考察2010/12/27 01:00

内田宏美、漢長安城の骨簽に関する一考察、『中国考古学』第10号、2010年11月。

内田さんからいただいた。ありがとうございました。
漢長安城で発見された武器の貢納記録とおもわれていた六万点近い資料に関する研究。実はそれが弓の一部の「骨弭」そのものであるという先行研究の見解をふまえ、その意義や由来をさらに探求したもの。

拝受 Orthography of Early Chinese Writing:2010/11/17 20:40

Imre Galambos,"Orthography of Early Chinese Writing::Evidence from Newly Excavated Manuscripts"Budapest Monographs in East Asian Studies 1, Department of East Asian Studies, Eötvös Loránd University,Budapest 2006.

 IDPのImre Galambosさんからいただいた。ありがとうございました。博士学位論文を発展させたもので、近年発見が相次いでいる戦国秦漢代の出土文字資料の文字学的、歴史学的研究書。
 幅広く先行研究に眼が通されているが、特に文字の分析手法に関する先行研究者として、Noel Barnard、鄭徳坤、William G.Blotz、松丸道雄、裘錫圭があげられている。
 まだ一部しか拝読していないが、先秦期における漢字の字体の分析を通じてそれが単系的な発展をとげたものでないこと、などが論証されている。

ここに日本語で簡単な紹介がある。
http://idp.afc.ryukoku.ac.jp/pages/about_publications.a4d#3