新収 『図書』2012年2月号(百済人祢軍墓誌の「日本」 )2012/02/07 17:32

『図書』2012年2月号、岩波書店。

 東野治之、百済人祢軍墓誌の「日本」

唐の百済人将軍祢軍墓誌に「日本」の2文字があって、確認できる最古の「日本」国号ではないかと話題になっている。東野論文ではその文脈・対句表現等から「日本」は倭国をさすのではなく「日の本」を意味し、朝鮮半島諸国をさす可能性さえある表現で、むしろ当時「日本」国号が確立していない可能性があると示唆する。

昨日、これに関するイベントがあるというお知らせを某先生より頂戴した。積極的にイベント情報を流しているサイトがネット上にはいくらもあるから、この個人的読書記録で紹介するにはあたらないが、「百済人祢氏」とか「百済人祢軍」、または「禰軍墓誌」などのキーワードでググるとそのほか情報や推論がぞろぞろとでてくる。たしかに注目されている。

ネット上では、nagaichiさんという方が運営されている「枕流亭のブログ」で墓誌拓本写真がアップされているのを確認できる。
http://d.hatena.ne.jp/nagaichi/20120107/p1

唐代墓誌、「日本」、朝日新聞、シンポ。井真成墓誌の時に似た現象がおきているようにもみえる。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2011/10/25/

新収 葬儀と日本人 他2011/11/20 22:31

菊池章太(著)『葬儀と日本人-位牌の比較宗教史』(ちくま新書)、筑摩書房、2011年8月。
小林茂(著)『外邦図-帝国日本のアジア地図』(中公新書)、中央公論社、2011年7月。

いずれも刊行まもなく購入したものの積読状態になっていた。未だ精読していないが積んどくだけでは困るので本棚に収めたい。

 前者は新潟中越地震後の山古志における調査からはじまって、位牌とはなにかをめぐり、儒仏道の比較宗教史へと展開する。そもそも東アジアのことを学ぶ意義は何なのか、身近なことへとうまく接続されている。
 後者は戦争と植民地統治の道具であった「外邦図」の作成過程をたどる。その存在は戦前の日本の東洋史学に科せられていた役割を考える上でも興味深い。

拝受 歴史の争奪-中韓高句麗歴史論争を例に2011/09/16 20:13

古畑徹、歴史の争奪-中韓高句麗歴史論争を例に、『メトロポリタン史学』第6号、2010年12月。

古畑先生からいただいた。ありがとうございました。
 現在の国民国家をまたぐ形で存在していた過去の国家や種族を、現在の国民国家同士が「争奪」するという「歴史の争奪」現象をのりこえた歴史叙述の可能性を模索したもの。
 とくに「渤海帰属問題」などともに現代中国と韓国の研究者によって激しい論争が展開された高句麗歴史論争が本稿の中心題材。それぞれの国家プロジェクトと個々の歴史家がもつ歴史叙述への思惑と問題点が精緻に分析され、その解決の方向性がしめされる。

新収 朝鮮史研究入門 ほか2011/07/15 20:15

朝鮮史研究会(編)『朝鮮史研究入門』、名古屋大学出版会、2011年6月。
森平雅彦(著)『モンゴル帝国の覇権と朝鮮半島』、山川出版社、2011年5月。

 朝鮮史研究入門は入門書であり、通史でもあり、史料解題事典でもあるという充実した内容になっている。中国歴史研究入門より50ページほど厚い。後者はこれから移動することが増えるのでその際に読もうと購入。

拝受 19世紀学研究 第5号 ほか2011/07/07 17:48

『19世紀学研究』 第5号、2011年3月。
 池田嘉郎「(書評)遅塚忠躬『史学概論』」

『資料学研究』第8号,2011年3月
 原 直史、地主史料からみた近世蒲原平野の米穀流通
 矢田俊文・卜部厚志、1751年越後高田地震による被害分布と震源域の再検討
 岩本篤志、鶴岡藩・新発田藩蔵書目録小考
 山内民博、朝鮮新式戸籍関連資料の基礎的研究(1)―忠清南道泰安郡新式戸籍関連資料―
 高橋秀樹、アガメムノンの夢―『イリアス』第2書に見る政治文化―

 個人的にいただいたもの等を優先的に紹介していたら紹介が異常に遅れた二冊。『19世紀学研究』は特集が2つ組まれ、多数の論文が掲載されるが、書評だけをチョイス。『史学概論』、これまで刊行されてきた歴史学概論のなかでとくによみやすく現代的な歴史学論。
 矢田・卜部「1751年越後高田地震による」は地図も付されており、たちどころに抜き刷りが捌ける可能性のある内容。

拝受 資料学の方法を探る(10)2011/04/19 18:12

愛媛大学「資料学」研究会(編)『資料学の方法を探る(10) 』、2011年3月。

陳偉、秦簡牘研究の新段階
工藤元男、「秦簡牘研究の新段階」コメント
金慶浩、韓国の木簡研究・現況
金秉駿、「韓国の木簡研究・現況」コメント
平川南、日本古代における文字使用
鈴木景二、日本古代の出土資料、伝世資料と情報伝達
佐藤信、日本古代の出土資料研究の課題
松原弘宣、古代の情報伝達と世論形成
畑野吉則、敦煌懸泉漢簡の郵書記録簡

「資料学」研究会代表の藤田勝久先生から、このプロジェクトの概要書とともにいただいた。ありがとうございました。

新収 史学雑誌 第119編第9号2010/10/22 22:21

『史学雑誌』第119編第9号、2010年9月

堀内淳一、北魏における河内司馬氏―北朝貴族社会と南朝からの亡命者

魏晋南北朝いずれの時期にも関わる横断的な存在として、また南朝からの亡命者として司馬氏に注目している。今後どう展開させていくのか非常に興味深いテーマ。ただ北朝を「貴族社会」とよぶのには事前に一定の説明が必要な気もする。

 今年の史学会の概要が関連のブログでまだ紹介されてないようなので、宋代くらいまでのものを今回だけ抜粋してみる。(自分は別用で残念ながら拝聴できません)

11月6日(土)
 シンポジウム「越境する歴史学と歴史認識」
  古畑徹、渤海国をめぐる日中韓の歴史認識
11月7日(日)
 部会・東洋史部会
  会田大輔、令狐徳棻等撰『周書』の北周像の形成―隋唐初の諸史史料との比較を通じて
  福永善隆、内朝の形成―宮中諸官の変遷を中心として
  藤野月子、和蕃公主の降嫁における儀礼について
  林美希、唐代前期における北衙禁軍の展開と宮廷政変
  鄭東俊、古代東アジアにおける律令の伝播と変容についての試論―高句麗・百済律令における所謂「泰始律令継受説」をめぐって

史学会(大会・例会案内)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/hsj/annnai.html

新収 中国出土資料研究2010/08/18 18:49

『中国出土資料研究』第14号、2010年3月

石原遼平、長沙呉簡名籍考-書式と出土状況を中心に
李成市・尹龍九・金慶浩(筆)橋本繁(訳)、平壌貞柏洞三六四号墳出土竹簡『論語』について

ほか論文、書評、訳注など6点。今号からか前号からか投稿要領の取り扱い対象範囲が広くなっているようである。

環日本海研究年報 第17号2010/03/31 22:38

『環日本海研究年報』 第17号、新潟大学現代社会文化研究科、2010年3月。

 収録論文10本。内訳は2009年11月におこなわれた国際ワークショップ「東北アジアにおける社会的生活基盤の形成」の3セッションのうち第2セッション「朝鮮における社会的生活基盤の形成」の論文が4点(執筆:金永白、山内民博、広瀬貞三、橋谷弘、大宮誠)。なお、その他セッション分は前掲『環東アジア研究センター年報』第5号に収録されている。
 これ以外に「東北アジア地域史の諸相〔I〕」の特集が組まれ、論文3本(内田宏美、芳井研一、陳祥)、そしてそのほかに通常投稿論文が3本(井村哲郎、岩本、高慶元)で、合計10本である。
 『環日本海』『環東アジア』両誌にわたり、論文14本を展開した国際ワークショップの中心的論文が、芳井研一「東北アジア地域の社会的生活基盤の形成」(『環東アジア』第5号)ということのようである。
 この2誌収録論文の主要キーワードは「東北アジア、満鉄、満洲、都市港湾建設、環境保全」というところで東北アジア近現代史に関する論文が過半をしめる。

 ここではあえてあきらかに異質な三点を紹介しておこう。

内田宏美、唐代室韋墓葬と森林ステップ-“角弓”の分析を中心に
岩本篤志、新発田藩の蔵書目録について-九代藩主・溝口直侯の「本草学」との関係を中心に
高慶元、外国人研修制度の実態と課題

http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/03/02/4916926

新収 資料学研究 第7号2010/03/26 19:09

『資料学研究』第7号、新潟大学大学院現代社会文化研究科プロジェクト「大域的文化システムの再構築に関する資料学的研究」、2010年3月。

堀健彦、平安越後古図の分類試論
岩本篤志、敦煌本「霸史」再考-杏雨書屋蔵・敦煌秘笈『十六国春秋』断片考
矢田俊文・卜部厚志、1828年三条地震による被害分布と震源域の再検討
高橋秀樹、ペイシストラトス第二次政権獲得時におけるピュエのエピソード-歴史的記憶の政治的機能とその破綻-
山内民博、朝鮮後期戸籍大帳僧戸秩及び新式戸籍僧籍の性格(下)
關尾史郎、南京出土の名刺簡について-「魏晋「名刺簡」ノート」補遺-