新収 典籍逍遙 ほか2009/11/05 18:36

『典籍逍遙-大東急記念文庫の名品』、大東急記念文庫、2007年。
『古典籍展観大入札会目録-和本の世界へ』、2009年。

前者は少し古いが、現在、五島美術館で開催されている(~11/29)古典籍の展覧会に関係する図録。展示では唐写本などがならぶなか、ひそかに直江版『文選』も展示されている(図録にはない)。
http://www.gotoh-museum.or.jp/exhibition/open.html

後者は11月14日に入札がおこなわれる古書籍の目録。入札前に展示もおこなわれるようである。日本の貴重な古典籍や書状がずらりとならび壮観。こちらでも直江版『文選』が出品されている。
 一部を除き、Webサイトのほうが全体的に写真が鮮明な気がする。
http://www.koten-kai.jp/catalog/index.php?cPath=700

そしてもうひとつ。
杏雨書屋特別展示会。
http://www.takeda-sci.or.jp/06_library/30kinen.pdf

ついに「敦煌秘笈」本が公開される。今回、展示される「敦煌秘笈」本は『新修本草』序例だけだが、蔵経洞から持ち出され、ほとんど人目にさらされないまま100年経過したコレクションの一端が公開される意義は大きい。李盛鐸旧蔵本を中心とし「最後の宝蔵」といわれたこの敦煌文書のコレクションがこれからの敦煌研究に与えるインパクトの大きさを確信している。

拝受 六朝・唐代小説中の転生復讐譚 ほか2009/11/10 19:35

福田素子、六朝・唐代小説中の転生復讐譚ー討債鬼故事の出現まで、『東方学』第115輯、2008年。
福田素子、偽経『仏頂心陀羅尼経』的研究、『中国古典文学与文献学研究』第4輯、2005年
福田素子、鬼討債説話の成立と展開――我が子が債鬼であることの発見――、『東京大学中国語中国文学研究室紀要』9、2006年。

 福田さんからいただいた。ありがとうございました。
 現代にも再話を生み出している説話(とくに討債鬼故事)の形成過程を論じ、中国人の世界観の一端にせまろうとしたものである。
 原型となる説話のひとつは敦煌文献の偽経(P.3236 , P.3916)にもあり、西夏本もある。
 偽経と説話という点でいくつか興味深い言及がみられる。

訃報 森本さん2009/11/14 01:48

まさかこんな記事を目にすることになろうとは思わなかった。

僕よりも若いのに。つらすぎる。

北京で街を案内していただいた数時間の会話、そして彼のあかるい笑い声が思い出される。

http://6ch.blog.shinobi.jp/Entry/84/

新収 中国古代の年中行事 第2冊 夏2009/11/17 00:56

中村裕一(著)『中国古代の年中行事』 第2冊・夏、汲古書院、2009年。

 主題どおりの内容にプラスして、敦煌文書だけでなく、天聖令に関する記述も満載。
 新しい知見も少なくない。場合によっては研究のネタになるような題材もあるかもしれないからこの値段でも高いとはいえない(もちろん私費購入)。ただ、この厚い本をいつ読むのか、新幹線に持ち込むには重すぎる。

 さて、ここ数日、更新が滞った。東へ西へと話をしに出かけていたせいもあって、目を通してない本や雑誌が山積みになっている。
 責務は十分に果たせたと思うし、実に有意義な体験をさせていただいた。いろいろいただきものもあるので、それも近いうちに書こうと思う。

 しかし、このくらいの年令になると、研究以外で精神的にしんどいことが次々にふりかかってくる。そういうと私も俺もという人がいるのだが、一概に秤にかけられる類のものでないので慰めにもならない。
 ともかく自分で整理していくことである。しばらく無理せず、流します。

Scientific Analysis, Conservation and Digitization of Central Asian Cultural Properties2009/11/17 18:51

ENAMI Kazuyuki/OKADA Yoshihiko(ed.),Scientific Analysis, Conservation and Digitization of Central Asian Cultural Properties (Cultures of the Silk Road and Modern Science),Ryukoku University.2004.

岡田至弘『平成18年度古典籍デジタルアーカイブ研究センター 研究成果報告書』、龍谷大学、2008年。

 岡田先生からいただいた。ありがとうございました。前者は2003年9月の国際シンポジウムにもとづく報告書。アジアの仏典や古文書の紙について、内陸アジア出土文物の保存について、資料のデジタル化に関して、多数の報告がまとめられている。

 文理融合、そして実資料を保持する機関ならではの強みが活かされた内容となっている。蛍光X線などによる非破壊の物質検査は大変興味深い。

拝受 宮島家三代 ほか2009/11/17 20:19

『宮島家三代-宮島詠士の書を中心に』(企画展図録)、米沢市上杉博物館、2005年。
『上杉伯爵家の明治』(特別展展図録)、米沢市上杉博物館、2008年。

米沢市上杉博物館よりいただいた。ありがとうございました。

新収 神呪経研究 -六朝道教における救済思想の形成2009/11/17 20:23

菊池章太(著)『神呪経研究 -六朝道教における救済思想の形成』研文出版、2009年1月。

昨年度購入したがエントリーしていなかった本。敦煌のいわゆる道教文献が多数引用されている。出土文字文献の研究のうえで重要な題材のひとつがあつかわれている(と思う)。

補遺『洞淵神呪経』諸本でもちられている敦煌文献
 P.3233,P.2567v,S3786,Dx10306
 P.2473,P.2749,P.2793,S3705,P.3309

拝受 杏雨書屋特別展示会図録2009/11/18 20:22

武田科学振興財団『第53回杏雨書屋特別展示会・和漢の本草書-中世以前の写本と刊本』、2009年。

 新たに重要文化財に指定された日本写本『新修本草巻第十五』のほか、歴代本草書の各種写本、版本の書影をおさめる。フルカラー総83ページの豪華カタログで、懇切丁寧な解説がつく。展示会場と講演会場で無償配布された。

 影印本でしかみれないような重文や自筆稿本がずらっとならぶ展示は圧巻だった。短期間ではあったが、敦煌秘笈本の展示には自説を添えさせていただく光栄を得た。

 本図録が少々不思議なのは奥付がなく、パンフレット的扱いになっていることである。図書館で探すのは結構むずかしい。ちなみにwebcatによると明治大学だけが全バックナンバーを所蔵する。

 この図録でとくに意義深いのは敦煌秘笈「新修本草序例」のカラー写真が収められていることである。写真は限定版の影片冊には載ったというものの広く写真がでまわったのはこれが最初である。

 私は医薬史にだけ関心をもっていたわけではないが、所蔵者からみれば、まず、これこそが関心ある資料であり、それをどう評価できるかがコレクション全体の価値に直結すると考えてきた。それだけにこの図録には感動があった。ついに敦煌秘笈本が、本草分野でもっとも権威ある図書館の重要な一点と認知されたからである。

 また、敦煌と『新修本草』について講演をさせていただく機会もえた。
 それも学識ありそうな方からお褒めの言葉をいただけたのはうれしい。
 http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2009/11/2-7c2b.html

 ともかく東洋学全体に関わる(にちがいない)パンドラの箱はついに開いた。

新収 江戸の本屋さん ほか2009/11/20 18:31

今田洋三『江戸の本屋さん-近世文化史の側面』(平凡社ライブラリー)、平凡社、2009年。

吉川忠夫・船山徹(訳注)『高僧伝』(2)(岩波文庫)、岩波書店、2009年。

新収 徽州商人と明清中国2009/11/20 18:37

中島楽章(著)『徽州商人と明清中国』(世界史リブレット)、山川出版社、2009年11月。

 中国において敦煌文書や吐魯番文書と並び有名な古文書群に徽州文書がある(紙以前の簡牘の類はおいといて)。前二者と違うのは宋代以降、主に明清期の文書が大半だということである。

 これの影印をずらっとそろえる大学図書館もあるようだが、それがどういうものなのか、専門外のものがそれを知るには少しハードルが高い気がしていた。そこに徽州のことを書いた入門書が出たというので購入してみた。

 ただ本書は文書学でなくどちらかといえば徽州商人の社会史的研究もしくは徽州地域研究を志向したものである。また、その活動がアジア、世界史の中でどう位置づけられるのかが意識されている。
 なお徽州文書がどのくらいあるか、その全貌はいまだ把握されていないそうである。本書ではむしろ史料として小説類が頻用されているのが印象深かった。