新収 『東方学』第123号2012/02/05 14:13

『東方学』第123号、2012年1月

論文8点、学会情報2点、座談会、追悼文などが載る。
個人的に関心があったのは以下のもの。

三浦國雄、『朱子語類』の読まれ方―新発田藩の一儒者の書き入れをめぐって
新見まどか、唐代後半期における「華北東部藩鎮連合体」
伊藤一馬、南宋成立期の中央政府と陝西地域―「宋西北辺境軍政文書」所見の赦書をめぐって

高田時雄、ロシア科学アカデミー東洋写本研究所と『東洋の文献遺産』誌など
金子修一、中国留学と二つの学会

学問の思い出―池田温先生を囲んで(座談会)

三浦論文は新発田藩の典籍・人物を扱う。新発田藩はとくに藩版などの江戸の出版や教育に関する研究者のほか、宋明清期の思想および書誌学研究者にとって魅力ある題材が非常に豊富なのだが、資料散逸の度合いがひどく、全体像がまるでつかめない。新発田市立図書館に行ってもアレ?とおもうわけである。そういうわけで以前いくつか論文を書き、その蒐集散逸過程を整理中である。
伊藤論文はロシア蔵コズロフ将来文書の実見調査を踏まえた内容。
敦煌吐魯番学の方面からも読み応えのある号だった。池田温先生の主要著作目録が付されている。

新収 江戸の本屋と本づくり2012/01/23 18:57

橋口侯之助、『江戸の本屋と本づくり(続・和本入門)』(平凡社ライブラリー)、平凡社、2011年10月。
中野三敏、『和本のすすめー江戸を読み解くために』(岩波新書)、岩波書店、2011年10月。
大澤顕浩(編著)『東アジア書誌学への招待 第一巻』(学習院大学東洋文化研究叢書)東方書店、2011年12月。

いずれも勉強になった。『江戸の本屋と本づくり』は書物の価格の決め方などに詳しい記述がある。ただ中国の本について言及した段に、中国では「文字の書かれた紙は大切にされていた」とあって、それに対して日本は云々とあるのだが、違和感があった。いずれの国でもそれらを守るものと破壊するものとが常にいたわけだから。識字層を考えても・・・そういちがいに対比はできないだろう。
『東アジア書誌学』はこれまで調べたあるものがちょっと学習院(大学ではない)に関係があるものであったため手に取った。手がかりのようなものは見つけられた。
いずれもどこが興味深くて購入したのか書きたいのだが、ちょっと時間がない。

拝受 「塩」(物を通してみる世界史)2012/01/20 17:29


佐藤貴保「塩」(物を通してみる世界史)『世界史のしおり』第52号、2011年10月。

佐藤先生からいただいた。ありがとうございました。

新収 中国義士伝 ほか2011/11/19 00:17

冨谷至(著)『中国義士伝-節義に殉ず』(中公新書)、中央公論社、2011年10月。
宮川尚志(著)『諸葛孔明-「三国志」とその時代』(講談社学術文庫)、講談社、2011年10月。
渡邉義浩(著)『関羽-神になった「三国志」の英雄』(筑摩選書)、筑摩書房、2011年10月。

 中国義士伝がとりあげるのは漢の蘇武、唐の顔真卿、南宋の文天祥。諸葛孔明は何度か改訂刊行されているもの。いずれもこれから読むつもりだが時間がとれるだろうか。
 中国史に関心を持つきっかけは様々であろうが、興味深い人物伝を読んで、という人は少なくないように思われる。

新収 趙和平敦煌書儀研究 ほか2011/08/02 18:59

趙和平(著)『趙和平敦煌書儀研究』上海古籍出版社、2011年3月。
李樹輝(著)『烏古斯和回鶻研究』民族出版社、2010年12月。
聶志軍(著)『唐代景教文献詞語研究』、湖南人民出版社、2010年9月。

『趙和平敦煌書儀研究』は当代敦煌学者自選集の一冊で著名な研究者の研究の来歴やその全体像を見渡すのに適した内容。敦煌文献のうち相当な量がある書儀研究の意義を総括した章のほか、社会生活や口語、政権との関係など多方面からみた各論が収録される。敦煌文献研究はこれまで日本などの東アジアの写本との比較をとおしてすすめられてきた側面をもつが、本書には正倉院文書(杜家立成雑書要略)との比較がふくまれる。

烏古斯はテュルク系民族で24氏族によって成り立っていたとされる「オグズ」のこと。北方諸民族との関係への言及もあるがとくに突厥とウイグルとの関係などについて研究がなされている。突厥文索引が付く。

景教文献詞語研究は著者の中山大学の博士論文をもとにしているという。敦煌漢文文献P.3847(景教三威蒙度贊・尊経)、一神論、志玄安楽経、大秦景教宣元本経、序聴迷詩所経、大秦景教流行中国碑などに用いられている語彙を他の宗教文献などと対比しながら分析したもの。中古音とシリア語との対比をしているところも若干みられる。中国の先行研究を中心に丁寧に紹介がなされている。洛陽の石幢への言及はあるが、一神論、志玄安楽経、大秦景教宣元本経、序聴迷詩所経が包含された敦煌秘笈への言及はない。すでに中国でも何本も敦煌秘笈に関連する論文が出ているがまだその認知度は低いようである

 欧文文献の引用が少なく前掲の高橋英海論文への言及もないが、近接した分析といえる。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/08/29/5313066

新収 東洋史研究 ほか2011/07/21 22:27

『東洋史研究』第70巻1号、2011年6月。
 鈴木宏節、唐代漠南における突厥可汗国の復興と展開

『史学雑誌』第120編第6号、2011年6月。
 伊藤一馬、北宋における将兵制成立と陝西地域―対外情勢をめぐって
 河内春人、(書評)中野高行著『日本古代の外交制度史』

 河内書評からは史料を用いて制度や「国家」を概念として論じることの難しさをあらためて考えさせられた。
 鈴木論文は突厥可汗国の拠点のひとつである「黒い沙漠」遺迹の比定と突厥碑文の解釈によって漢文史料には記されない突厥側の対唐動向をみいだし、伊藤論文は北宋の軍事単位である「将」の編成と設置の分析からその対外政策をよみとろうとする。実証しようとする内容だけでなくベクトルも逆だが、所謂中国王朝(論じられているのは唐と北宋)がユーラシア東部全域の動向と密接に関わっている(その一部である)とみる点では通底するようである。

新収 朝鮮史研究入門 ほか2011/07/15 20:15

朝鮮史研究会(編)『朝鮮史研究入門』、名古屋大学出版会、2011年6月。
森平雅彦(著)『モンゴル帝国の覇権と朝鮮半島』、山川出版社、2011年5月。

 朝鮮史研究入門は入門書であり、通史でもあり、史料解題事典でもあるという充実した内容になっている。中国歴史研究入門より50ページほど厚い。後者はこれから移動することが増えるのでその際に読もうと購入。

拝受 西北出土文献研究 第9号2011/07/12 17:57

『西北出土文献研究』 第9号、2011年5月。

【論説】.
町田隆吉、甘粛省高台県出土の冥婚書をめぐって
北村永、甘粛省高台県地埂坡魏晋3号墓(M3)について
高橋秀樹、酒泉丁家閘5号墓壁画胡人像に見られる氈と 「三角帽」
關尾史郎、敦煌新出鎮墓瓶初探ー「中国西北地域出土鎭墓文集成(稿)」補遺(続)-

【ノート】
赤木崇敏、ロシア蔵コータン出土唐代官文書Dx.18921,18940,18942

【訳注】
佐藤貴保、西夏法令集『天盛禁令』符牌関連条文訳注(下)

【集成】
玄幸子、サンクトベテルブルグ所蔵教煌文献(Dx.05001-05500)同定リスト(稿)

 編集にあたられた関尾先生からいただいた。ありがとうございました。前半4点が甘粛「文物」研究で、後半3点が俄蔵「文献」研究の様相をなしており、バラエティに富んだ内容。
 甘粛墓群出土資料は年代比定のむずかしい資料がおおく、本国の発掘調査方法が根本的に改善されることが研究を展開する前提になるとおもわれる。町田・關尾論文はそんななかで情報が割合豊富で年代比定がしやすい鎮墓文資料等を対象にとりあげ、墓葬文化を分析する。同じく墓葬に用いられた吐魯番文献(とくに衣物疏)の研究に通じるものがあるように思われる。
 赤木論文はとりあげた断片を「8世紀後半にコータンに駐留していた唐の鎮守軍やその麾下の軍事機関が発した文書」であることを同定したもので官文書の研究をする者には技術面で学ぶところが多い内容。

拝受 内陸アジア出土4~12世紀の漢語・胡語文献の整理と研究2011/06/23 17:49

土肥義和(代表)『内陸アジア出土4~12世紀の漢語・胡語文献の整理と研究』(科研基盤(C)研究成果報告書、平成22年度分冊)、2011年3月

土肥・片山章雄先生からいただいた。ありがとうございました。内容はいかのとおり。

岡野誠、旅順博物館・中国国家図書館における『唐律』『律疏』断片の原巻調査
片山章雄・王振芬・張銘心、旅順博物館所蔵文書と大谷文書その他文書の綴合(日文版と中文版あり)
土肥義和(編)、宋代繁塔石刻資料集(稿)補遺
速水大、杏雨書屋所蔵「敦煌秘笈」中の羽620-2文書について

羽620-2は府兵制に関わる蒲昌府関連文書である。まだこの部分の影印冊は刊行されていないが、速水報告では展示を仔細に観察することで目録冊の記事を補正すると同時に推論をおこない、展望を示している。かつて日比野丈夫氏が紹介したものもあり、再度、唐代史で関心を集めると思われる資料のひとつである。速水さんからはご自身が書かれた部分の複写をいただいた。ありがとうございました。

新収 内陸アジア史研究 第26号2011/06/22 17:30

『内陸アジア史研究』第26号、2011年3月

特集
 内陸アジア史学会50周年記念公開シンポジウム「内陸アジア史研究の課題と展望」
  (基調報告)森安孝夫・堀川徹
  (パネル講演)林俊雄・稲葉穣・森川哲雄・小松久男・中身立夫・桃木至郎
論文
 白玉冬、8世紀室韋の移住から見た九姓タタルと三十姓タタルの関係
 ケレイドジン・D・シーリン、清代外モンゴルにおける書記の養成

少し、タイトル字数がおおいので省略させていただいた。シンポジウムで講演された内容とそのレジュメを報告形式にしたものが掲載されている。また、論文のほか書評、学会情報が掲載される。

ホームページがあるので全目次はそちらで。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/sias/nak/index.htm