新収 葬儀と日本人 他2011/11/20 22:31

菊池章太(著)『葬儀と日本人-位牌の比較宗教史』(ちくま新書)、筑摩書房、2011年8月。
小林茂(著)『外邦図-帝国日本のアジア地図』(中公新書)、中央公論社、2011年7月。

いずれも刊行まもなく購入したものの積読状態になっていた。未だ精読していないが積んどくだけでは困るので本棚に収めたい。

 前者は新潟中越地震後の山古志における調査からはじまって、位牌とはなにかをめぐり、儒仏道の比較宗教史へと展開する。そもそも東アジアのことを学ぶ意義は何なのか、身近なことへとうまく接続されている。
 後者は戦争と植民地統治の道具であった「外邦図」の作成過程をたどる。その存在は戦前の日本の東洋史学に科せられていた役割を考える上でも興味深い。

拝受 西魏・北周霸府幕僚の基礎的考察 ほか2011/07/07 20:06

会田大輔、西魏・北周霸府幕僚の基礎的考察-幕僚の官名官品・序列を中心に、『明大アジア史論集』第15号、2011年3月。
会田大輔、日本における『帝王略論』の受容について-金沢文庫本を中心に、『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』(アジア遊学140)、勉誠出版、2011年4月。
前島佳孝、西魏宇文泰の官制構造について、『東洋史研究』第69号、2011年3月。
堀井裕之、崔民幹の事跡と『貞観氏族志』、『東アジア石刻研究』第3号、2011年3月。

前島さん、会田さん、堀井さんからいただいた、ありがとうございました。
『帝王略論』、前島、堀井論文は前掲。
 会田さんは次のようなものも書いておられた。 http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/07/12/5213287 次は敦煌文献研究という展開か。 http://www.kisc.meiji.ac.jp/~jkodaken/jpn/activity/conference/cf090828.html
 会田「西魏・北周霸府幕僚」はこれまであまり注目されてこなかった覇府内の官制構造を分析、今後北斉の分析を視野に入れるとする。
 前島論文はこれまで北朝史でしばしばおこなわれてきた有力者を中心とした人物把握でなく中央政府の構造を制度史的に完全に把握することの重要性をとき、先行研究の史料批判の手法、官制理解の不足を論難、宇文泰の官歴の意味さえ十分に把握されていなかったことを指摘、その分析から西魏北周史をみなおそうとする(紹介重複)。
 堀井論文は某シンポジウム発表の(失礼しました。勘違いでした。かつて某研究会で発表されたものですね)題材のようである。『貞観氏族史』で当初、第一等にあげられたものの、太宗によって第三等に降格された崔民幹(崔幹)の新出墓誌とその一族の墓域の変遷に注目、その事跡などの分析から太宗の氏族政策の意味を問い直す。この固有の事象に言及した先行研究として陳寅恪があげられていることに不自然さはない。ただ、前時代の研究を批判するのは容易なので、それを乗り越えた先にどういう見方を提供したかが肝心であろう。本論ではたしかに十分ではなく、続編に展開していくようである(以上修正)。

 いずれも正史や石刻史料が官職名の記録に比較的忠実でその数もあるという特性をふまえた研究。

拝受 19世紀学研究 第5号 ほか2011/07/07 17:48

『19世紀学研究』 第5号、2011年3月。
 池田嘉郎「(書評)遅塚忠躬『史学概論』」

『資料学研究』第8号,2011年3月
 原 直史、地主史料からみた近世蒲原平野の米穀流通
 矢田俊文・卜部厚志、1751年越後高田地震による被害分布と震源域の再検討
 岩本篤志、鶴岡藩・新発田藩蔵書目録小考
 山内民博、朝鮮新式戸籍関連資料の基礎的研究(1)―忠清南道泰安郡新式戸籍関連資料―
 高橋秀樹、アガメムノンの夢―『イリアス』第2書に見る政治文化―

 個人的にいただいたもの等を優先的に紹介していたら紹介が異常に遅れた二冊。『19世紀学研究』は特集が2つ組まれ、多数の論文が掲載されるが、書評だけをチョイス。『史学概論』、これまで刊行されてきた歴史学概論のなかでとくによみやすく現代的な歴史学論。
 矢田・卜部「1751年越後高田地震による」は地図も付されており、たちどころに抜き刷りが捌ける可能性のある内容。

新収 三国志-演義から正史へ、そして史実へ ほか2011/06/08 19:58

渡邉義浩(著)『三国志-演義から正史へ、そして史実へ』(中公新書2099)、中央公論社、2011年3月。

三村太郎(著)『天文学の誕生-イスラーム文化の役割』(岩波科学ライブラリー173)、岩波書店、2010年8月。
ダニエル・ジャカール(著)吉村作治(監修)遠藤ゆかり(訳)『アラビア科学の歴史』(知の再発見叢書131)創元社、2006年12月。

近藤好和(著)『武具の日本史』(平凡社新書539)、平凡社、2010年8月。
宇田川武久(著)『江戸の砲術師たち』(平凡社新書512)、平凡社、2010年2月。

自分が知らない世界にちょっと入り込めた気がするのが新書の類の良いところである。またむずかしい研究が平易に説明されていたりもする。長時間移動の際にでも読もうと購入。いずれも読了していない。

拝受 環境と歴史学2010/11/01 21:08

水島司(編)『環境と歴史学―歴史研究の新地平』、勉誠出版、2010年9月。

執筆者の一人の森田さんからいただいた。ありがとうございました。
歴史学研究において総合的で新らしいテーマである「環境」という切り口からの論考を集め、その展望をしめしたもの。

森田直子、ドイツの歴史学と「環境史」―ヨアヒム・ラートカウ『自然と権力―環境の世界史』を例に

全部の目次はこちら。
http://www.bensey.co.jp/book/2272.html

以下は眼を通したもの。とりあえずはアジア系に片寄る。

鶴間和幸、歴史学と自然科学ー始皇帝陵の自然環境の復元
卯田宗平、中国における環境史研究の可能性―生業技術からみるミクロな人間ー環境系
上田信、生態環境史の視点による地域史の再構築―生物多様性の歴史的変化研究のための史料について
クリスチャン・ダニエルズ、雲南地域住民の天然資源保護・管理―十八世紀後半~19世紀前半の元江流域・メコン河上流域を事例として
石川博樹、偽バナナは消えたのか―北部エチオピアの栽培植物をめぐる歴史学的考察
海老澤衷、棚田と水資源を活用した楠木正成
高橋 学、環境史からみた中世の開始と終焉
北條勝貴、神仏習合と自然環境―言説・心性・実体

それぞれの切り口がおもしろいのであとで精読することにしたい。

新収 本を千年伝える ほか2010/10/28 18:10

藤本孝一(著)『本を千年伝える―冷泉家藏書の文化史』朝日新聞出版、2010年10月。
冷泉為人(著)『冷泉家・蔵番ものがたり―「和歌の家」千年をひもとく』NHKブックス、2009年8月。

 前者は長年冷泉家蔵書の整理に関わってきた研究者によるもの。書誌学とは異なる古文書学的な視点を応用した写本研究の立場から冷泉家蔵書の読み解きかたを提示している。基本的に自分には共感できる見方で、概説書ながら得るところが多い。

新収 道教儀礼の歴史的研究 ほか2010/08/06 22:33

丸山宏(著)『道教儀礼の歴史的研究』、汲古書院、2004年
松本浩一(著)『宋代の道教と民間信仰』、汲古書院、2006年
『道教美術の可能性』(アジア遊学)勉誠出版、2010年
小林春樹・山下克明(編)『「若杉家文書」中国天文・五行占資料の研究』、汲古書院、2007年。

 道教の儀礼など、あれこれ関心があることがあって購入。ただの関心を充足させるだけなら図書館にはしればいい、というところに住んでいる人はそれでよいが、私の場合、それができないので、調べかつ覚えておくには身銭をきるのが一番確かな手段になってしまっている。どうしても入手できないときだけ図書館の相互貸借を利用する。ただ複写したことを記憶しておけるのはそのテーマで論文を書いている時に限られるから、より確実に記憶するには、空間を占める書籍の形で存在してくれるのが一番よい。
 最後の一点は日本の資料に関する内容。この前、啓蒙書を読んだこともあって購入。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/07/08/5206489

 買わないはずのiPadを遅ればせながらしばらく使うことになった。革新的な機械だとおもった。
 ただ、カーソルキーがないのにはいらついたし、ショートカットキー慣れしている自分には入力編集は苦痛だった。すでにかなりの数のファイルを階層化して管理しているので、アプリ毎にファイルを管理する仕組みに変えるのも手間がおおすぎる。ビュワーとしてはすばらしいが、ノートパソコンとあわせて持ち運ぶと結構な重さになるので、もう少し入力面をカバーして欲しいところである。そのうち改善されるのだろう。
 とりあえず、記念に、IDPのサイトがどのようにみえるかくらいは、確認しておくことにした。ぴったりとはいかないが、容易に拡大ができるのでネットが使える環境やイメージを扱う際には、かなりおもしろく使える感触。

新収 陰陽道の発見2010/07/08 19:04

山下克明(著)『陰陽道の発見』NHK出版、2010年6月。

 陰陽道研究の入門書。帯の「陰陽道は、夜を生きる平安貴族の行動原理」はいかがなものかとおもうが、本文には怪しげな雰囲気がなく、また文章の技巧や解釈の差違をふりまわさず、必要な史料を丁寧に紹介しつつ、わかりやすく読みやすい。きっと著者が史料を知悉しているからなのだろう。
 冒頭、敦煌文献にもふれている。

新収 日本と道教文化 他2010/04/14 19:40

坂出祥伸(著)『日本と道教文化』、角川選書、2010年3月。
吉川忠夫・船山徹(訳)『高僧伝(三)』、岩波文庫、2010年3月。

 ともに一月前ほどに購入。なかなか精読する時間がないまま今日に至ったが、前者は道教について知らない人の興味もひくに違いないが、出土文献史料研究をすすめていくうえでも示唆するところが多いことは少し読んだだけでわかる。
 後者は、訳注で読めること自体がかなり贅沢な気がしている。

新収 資料学研究 第7号2010/03/26 19:09

『資料学研究』第7号、新潟大学大学院現代社会文化研究科プロジェクト「大域的文化システムの再構築に関する資料学的研究」、2010年3月。

堀健彦、平安越後古図の分類試論
岩本篤志、敦煌本「霸史」再考-杏雨書屋蔵・敦煌秘笈『十六国春秋』断片考
矢田俊文・卜部厚志、1828年三条地震による被害分布と震源域の再検討
高橋秀樹、ペイシストラトス第二次政権獲得時におけるピュエのエピソード-歴史的記憶の政治的機能とその破綻-
山内民博、朝鮮後期戸籍大帳僧戸秩及び新式戸籍僧籍の性格(下)
關尾史郎、南京出土の名刺簡について-「魏晋「名刺簡」ノート」補遺-