五島美術館2013/03/30 18:34

『時代の美―五島美術館・大東急記念文庫の精華』(第4部)五島美術館、2013年2月

 息つく暇が無く一年が過ぎた。ひさびさに近所にでかけて五島美術館で展示を見る。
 唐代の伝世写本が二点(『玉篇』、『註法華経信解品』)。『玉篇』は重要文化財。どういう過程をへてここに所蔵されたのだろうか(以前刊行された図録『典籍逍遥』にも載っている)。後者はフランク・ホーレー旧蔵品だそうで、解説の通り、注が妙に気になり、書風も唐末かそれより後のものにみえる。
 ほかに敦煌写経が二点あり、一点(「大方等大集経」)は隋・開皇十五年の紀年があるとされ、李盛鐸旧蔵を示す「李盛鐸印」(回印)および「木斎」印と李盛鐸の跋文(小さな文字で余白に書き込まれている)がある。
 巻末部分を開いての展示であったので、巻頭部分はみれなかったが、解像度の低い図録写真を精査したところ、やはり李盛鐸関連の印記があって、おそらく一顆は「木斎眞賞」、(拡大しても見えない。根拠は大きさだけ)もう一顆は「敦煌石室秘笈」(「石室」および「笈」の竹かんむりは判読できる)と思われる。これはおもしろい一品である。
 もう一点は唐代の写経(金剛般若波羅蜜経)とされる。四点とも五島美術館併設の大東急記念文庫蔵品。めったに展示されるものではないと言う意味では貴重な機会。
施目録 107-8-1-1

新収 第63回正倉院展(図録)2011/11/19 02:57

奈良国立博物館(編)『第63回「正倉院展」目録』、2011年10月。

 毎秋開催される正倉院展。毎年、展示物が異なるので、いついっても大体、初めて実見するということになる。近くに住んでいれば何度でも行きたいのだが、自分は今年で3回目。
 今年の目玉は蘭奢待(黄熟香)、金銀鈿装唐太刀あたりであろうか。酔胡王面もおもしろい。
 正倉院遺物はそのものだけでなく、かつて作成された目録や記録が残されていて、由来がよくわかる。また日本古代史だけでなく東洋史の視点から見ても興味深いものが多いことはこれまでの研究史にもあきらかである。いくつかの公文書にも興味深いものがあった。あまりに忙しかったので心に余裕がなかったのだが観覧を促してくださった先生にあらためて感謝。

新収 越後の大名2011/08/08 23:52

(図録)『越後の大名』新潟県立博物館、2011年7月。

現在展示中の企画展の全111頁のカラー図録。1000円もしないことに驚く。
 越後一国を統治した堀秀治そして松平忠輝の改易のあと、小藩分立となった時代を焦点に当てて企画されたもの。
 糸魚川藩、高田藩、椎谷藩、長岡藩、与板藩、三根山藩、村松藩、新発田藩、三日市藩、黒川藩、村上藩と小藩(高田、長岡、新発田、村上はそれなりの規模がある)に関する資料もまんべんなく収められている。個人的に興味のある典籍とか朝鮮、中国に関するものはないが、新潟大学所蔵資料がかなり使われており、驚く。
 何点か変わり兜の類があったりして、純粋に武将物が好きな人にも子供連れにもおすすめできそうな内容である。
 県博は長岡にあり、駅からも離れているわけだけだが、8/21まで長岡駅近くの商工会議所で「長岡藩主牧野家の至宝展」が同時に開かれているそうなので、一日かけて長岡の博物館巡りとするのが長岡市のおすすめってことなのだろう。

紹介 越後の大名 展覧会2011/07/14 00:14

 ここ10年にみたうちでずばぬけて格好のいいポスターデザインだと勝手に思ったので、例外的にアップしてみた。

夏季企画展「越後の大名」
 2011年7月30日(土)~9月11日(日)
新潟県立歴史博物館
http://www.nbz.or.jp/jp/index.html

 単に鎧から個人的に連想することで全然関係ない話だが、自分が正史を用いて書いた論文の抜き刷りを日本中世史専攻の友人に渡したところ、六国史のような正史中心で書いた論文に意味があるのかといわれ、愕然とした記憶がある。中国古代史は基本的に正史編纂史料の背景まで読み込み、雑史もまじえて多角的に論証するもので、日本とは識字層や史館(官)制度、残された史料の字数にも著しく差があると応酬したものの、「後世に記録として残すことを意図していない史料を読み込むことではじめて可能になる歴史叙述」が成り立ちうるのは当然で、それが彼が属する世界の「常識」で、自分は異なる「常識」の中にいたわけである。
 そして何十年後かに同じ日本中世史分野の著名な先生にあなたの専門とする時代に貴族でも豪族でも土地の有力者でもなく、過酷な状況から逃げてでも生き延びようとした「名前さえ残らないような人たち」に関する史料はないかといわれ、かんがえさせられることがあった。この先生はそういう人たちの生命力みたいなのをうまく描きだすのだが、私には思うような史料は提供できなかった。たしかに両国間で伝存した史料には歴然とした性格の差がある。「中世」とかいったって800年以上離れているわけだ。ただそういってしまえばそれまでではある。
 ともかく自分のいる世界の「常識」はいつもうたがってみたほうがおもしろいものがみえてくるのだと思っている。

拝受 第56回 杏雨書屋特別展示会図録2011/07/12 00:57

『第56回 杏雨書屋特別展示会図録―田中彌性園文庫から見た近世大阪の医学』、武田科学振興財団、2011年4月

杏雨書屋からいただいた。ありがとうございました。全75頁の薄い展示会用図録。フルカラー。展示会時期でなくてもいただけるようである。

彌性園とは大阪に400年つづいた医家、田中氏の薬草園や屋敷などの遺跡のことでその古書籍古文書が杏雨書屋に文庫として保管されることになったということのようである。

木村蒹葭堂や頼三樹三郎、曲直瀬道三、伊藤仁斎などの近世著名人の書簡のほか、正徳刊本の『奇効良方』をはじめとした中国刊本、現存写本のきわめて少ない南宋医書や『福田方』などの写真・解説がずらりと並ぶ。

こちらの紹介が詳しい。「世界でも中国・台湾・香港を除くとたぶん100人くらいしか興味のなさそうな話」といえばそうかもしれません。
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2011/04/post-acbe.html

なお、関西遠征のついでにマニ教関連の特別展示を見に行った際、購入しようとした大和文華館の特別展図録および美術研究誌『大和文華』はすべて売り切れだった。もちろん先月の話である。

http://www.kintetsu.jp/yamato/exhibition/50th_2.html
http://www.kintetsu.jp/yamato/shuppan/yamatobunka.html

新収 Russian Museum of Ethnography2011/03/01 17:54

Olga A.Botyakova,"Russian Museum of Ethnography GUIDE",AO Slavia,St.Petersburg,2010.

ロシア民族学博物館の英語版ガイドブック。総頁数223ページのフルカラー図録。
 とくに19-20世紀前半期の中央アジアの民族の生活や文化の概説として手頃な内容である。また、20世紀前半撮影の白黒写真を多数収載しており、一般的な講義で資料として回覧する際などでも使用できそうである。

ホームページからも多数の情報が得られる。
http://eng.ethnomuseum.ru/

新収 Iskusstvo Sogda2011/02/28 19:49

Б. И. Маршак," Искусство Согда", Государственный Эрмитаж,Санкт-Петербург,2009.2

B.I.マルシャーク監修、エルミタージュ美術館刊行のブックレットサイズのガイド『ソグドの芸術』。フルカラーの写真多数。エルミタージュ美術館にはソ連時代に中央アジア発掘で収集された遺物が多数展示されている。このブックレットでは主に壁画の解説がなされている。なお、ソグド美術の大家マルシャークは2006年に逝去している。
 お土産に買ってくれば喜ばれたであろうが、店頭に一冊しかなかった。

http://www.ozon.ru/context/detail/id/4886710/

拝受 特別展・上杉家家臣団(図録)2010/10/28 18:38

阿部哲人(編)『特別展・上杉家家臣団』(図録)米沢市上杉博物館、2010年9月。

 2010年9月18日から11月23日まで米沢市上杉博物館で開催されている「直江兼続生誕450年 特別展・上杉家家臣団」の図録。フルカラー。今回は漢籍や藩蔵書の類は含まれていないが、家臣団の結びつきがわかる様々な古文書、資料からはいくつの示唆めいたものを得ることができた。
 巻末解説「中世越後の小国氏」を執筆した矢田俊文先生からいただいた。ありがとうございました。

米沢市上杉博物館
http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/uesugi.htm

誕生!中国文明2010/07/20 03:00

東京国立博物館・読売新聞社『誕生!中国文明』(博物館図録)読売新聞社、2010年7月。
http://tanjochina.jp/main/viewpoint/chapter1/index.html

この7月から東京国立博物館(展示中)、10月から九州国立博物館、2011年4月から奈良国立博物館で展示される予定の展覧会図録。

 事実上、河南省出土文物展。河南省には最近開発が著しく、文物の発見が相次いでいるという古都洛陽があることも魅力だ。主に彩陶灰陶の時代から宋金くらいまでの文物がならぶ。数としては青銅器が多い印象。信陽楚墓竹簡の日本での展示は珍しいかもしれないし、すでに何度か来日しているような有名な文物もある。
 ずーっとみていくと未見の貴石印章がでてくる。ただ、石が小さくて展示では全然印面が見えないようだ。図録の写真もきつい。解説が要を得ているとおもえば、拙稿を参照していただいていたからだった。個人的にはこれもガヨーマルトかもしれないとおもうのだが、解説はそうはいってない。たしかにササン朝のものと比べると簡略の度が過ぎ、滑稽なほどデフォルメを経たことになる。何の図像か判断しないのが無難だろう。リングは同種の中国出土品にわりによくみるつくり。
 既視感はあったが、南北朝時期の彩色画像磚や石棺床もなかなかおもしろい。

敦煌の典籍と古文書2010/04/27 00:12

『第54回 杏雨書屋特別展示会「敦煌の典籍と古文書」』。武田科学振興財団、2010年。
 杏雨書屋「敦煌秘笈」の展示会図録。

 さて、先日展示会が開かれた杏雨書屋の「敦煌の典籍と古文書」については是非とも記録にとどめておかねばとおもっていたのだが、同時期に重厚な著書をいくつかいただいてしまい、しかもこれらがなかなかおもしろいので、あまり時間がとれずにいた。
 また講演会当日は午前は展示をみて、昼抜きのまま講演を聴講、その後も実に勉強することが多い一日で、低血糖からか頭痛がして、しばらくフラフラだったこともある。

 これほど新資料満載の展示会はそうそうないだろうし、資料のセレクトも目が利いている。解説は簡にして要を得ている感じで、拙稿を何点も引用いただいて光栄かつ励みになった。ただ他資料については拙稿以外であげてほしい論文もあるので、どこかで紹介しようと思っている。ちなみに後で羽田先生の論文集を見た限りでは景教経典の所蔵先を取り違えているようである。

天漢日乗さんの観察がおもしろい。
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2010/04/419424424-12301.html

 知人の敦煌学研究者もチベット文字をよんでリサンサンかなといっていた気がします。
 低迷する業界のためにちょっと煽っておきます。展示されていたものの一部には解説に書いてなくても先行研究がある場合があります。別途、古写真が公開されていたからです。
 ただ画指については仁井田先生等の業績がありますが、リサンサンに関する文書については外に出たのが初めてのはず。古写真も先行研究もありません。贋物かどうか読み込んで読み込んで何度も疑って見ればよいかと思います。千載一遇とはまさにこのことです。
 おまえが論文書けといえば書かぬでもありませんが、当面、手が回りそうにありません。