拝受 遼東公孫氏政権と非漢民族2010/06/01 21:02

三崎良章、遼東公孫氏政権と非漢民族、『教育と研究』(早稲田大学本庄高等学院研究紀要)第28号、2010年3月。
三崎良章、遼東的漢魏交替-従遼陽壁画墓的角度、『魏晋南北朝史研究-回顧与探索』湖北教育出版社、2009年8月。

三崎先生からいただいた(「崎」は本来「﨑」)。これまでの遼東地域の研究に、壁画墓の研究から得られる知見を援用、また位置づけている。
ありがとうございました。

拝受 北魏服属諸族覚書2010/06/01 21:11

窪添慶文、北魏服属諸族覚書、『立正大学大学院紀要』第26号、2010年3月。
窪添慶文、南北朝時期の国際関係と仏教、鈴木靖民(編)『古代東アジアの仏教と王権ー王興寺から飛鳥寺へ』勉誠出版、2010年3月。

窪添先生からいただいた。ありがとうございました。前者は先行研究を踏まえながら北魏の部族解散について論じている。

新収 明治前期日中学術交流の研究2010/06/01 21:20

陳捷(著)『明治前期日中学術交流の研究』汲古書院、2003年2月。

 以前から何度も図書館で開き、どうせだから購入しようと思っていたが、他の本を優先していて未入手だった。
 日本に中国の古籍がたくさんあるが、中国や台湾にも日本で出版された古籍・善本がたくさんある。その経緯を調べていく際に本書は良いガイドになる。そこは米沢藩の宮島誠一郎や日本公使であった李盛鐸が行き交う場である。
 本書は古書で入手した。日中学術史にその名を知られ、数年前に物故された先生の蔵書印が捺され、ところどころ線が引かれている。

新収 唐研究 第15巻 ほか2010/06/02 18:36

『唐研究』 第15巻・「長安学」研究専号、2009年。
 目次はこちら
http://www.zggds.pku.edu.cn/004/002/043.htm
 「新史学」的手法が多様になりつつある様子がわかるほか、史料論としておもしろいものもあって、どれも興味深いタイトル。

朱玉麒(主編)『西域文史』第3輯、2008年12月。
 孟憲実、羅新先生のほか、広中智之、吉田豊、森安孝夫三先生の題目にひきつけられる。
 目次はこちら。http://www.serindia.org.cn/post/7.html
 第4輯にはカシュガル出土の胡人像の研究があるようである。
http://www.serindia.org.cn/post/178.html

北京大学中国古代史研究中心 http://www.zggds.pku.edu.cn/bottom.htm
新疆師範大学西域研究中心 http://www.serindia.org.cn/
上の学術誌を刊行する両大学センターサイトともに豊富な学術情報を公開する。とくに北京大学ではかなりの論文がPDFで提供されており、有益。
 かつて中国史の研究情報は日本にいる方がかえって早く収集できるなどと言われていたが、そういう時代は終わった気がした。日本でここまで緻密に情報を集約したサイトをつくろうとすれば、短期間のうちでの博論執筆や言語習得を課せられた院生の貴重な労力を犠牲にするだろう。
 しかし、個人が個人の意志でネットに情報を発信していけば、その総量はこういう単体サイトをゆうに凌ぐ意義をもつような気もする。
 2サイトの充実ぶりをみて、日本で中国史を研究(教育)することの意義や情報発信していく意義について考えさせられた。

新収 突厥第二汗国漢文史料編年輯考2010/06/02 19:29

呉玉貴(著)『突厥第二汗国漢文史料編年輯考』(上・中・下)中華書局、2009年12月。

 日本でもシャバンヌ『西突厥史料』、岑仲勉『突厥集史』は突厥研究の基本的な工具書としてよく知られているが、著者の序文には、近年の墓誌をはじめとした出土資料の発見や、研究手法の深化、検索手法の多様化などによって、先行研究に加筆修正すべき点が多々生じてきており、新史料をあわせて整理、検討すべき時が来ている旨が記されている。
 唐代史においては基本工具書的存在といえる。
これ一点だけでもいろんな研究に発展できることを考えると私が購入したのは宝の持ち腐れにもおもえるが。

新収 唐宋時代刑罰制度の研究2010/06/02 19:42

辻正博(著)『唐宋時代刑罰制度の研究』(東洋史研究叢刊74)、京都大学学術出版会、2010年2月。

 中国法制史の専著。天聖令が多用されており、そうした方面からも勉強になる点が多い。
 すでに数多くのブログでとりあげられている。

目次はこちら。
http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876985326

新収 中国本草要籍考2010/06/02 19:54

尚志鈞(著)尚元勝、尚元藕(整理)『中国本草要籍考』安徽科学技術出版社、2009年2月。

 著者が華夏出版社「本草名著集成」シリーズで執筆した各本草書の解題をもとに増補修正をくわえ、さらに「歴代本草人物名録」を付した本草文献研究の基本工具書。
 同種のものに、尚志鈞・林乾良・鄭金生(著)『歴代中薬文献精華』科学技術文献出版社、1989年があるが、その増補改訂版にもあたるようである。装丁の変化や内容の充実度は隔世の感がある。

新収 河北考古重要発現1949~2009 ほか2010/06/02 20:11

河北省文物研究所(編)『河北考古重要発現1949~2009』、科学出版社、2009年12月。
 図録多数、立派な装丁。一枚の写真で私には買う価値のあった本。

賈璽増(著)『中国服飾芸術史』天津美術出版社、2009年1月。
 202ページなので情報量はすくないが、これまでの服飾史の本と異なるのは、比較的細かな部位の図示説明があること。

拝受 西北出土文献研究 第8号2010/06/03 21:46

西北出土文献研究会、『西北出土文献研究』第8号、2010年5月。

園田俊介、北涼沮渠氏と河西社会-北涼建国以前の沮渠氏を中心として-
町田隆吉、4~5世紀吐魯番古墓壁画・紙画再論
關尾史郎、「五胡」時代の符について-トゥルファン出土五胡文書分類試論(III)ー
岩本篤志、杏雨書屋蔵「敦煌秘笈」概観-その構成と研究史-
片山章雄、大谷探検隊吐魯番将来≪玄武関係文書≫続考
荒川正晴、ソウル、シルクロード博物館参観記
佐藤貴保、西夏法令集『天盛禁令』符牌関連条文訳注(上)

編集を担当された關尾先生からいただいた。お手数かけました。
亜東書店、朋友書店で販売されると聞いている。

http://www.ato-shoten.co.jp/

拙稿 杏雨書屋蔵「敦煌秘笈」概観 ― その構成と研究史2010/06/03 23:08

(『西北出土文献研究』第8号、2010年5月収録)

冒頭より: 
 杏雨書屋蔵「敦煌秘笈」は京都大学の教授で第12代総長でもあった羽田亨(1882-1955)による敦煌文献コレクションで、現在は蒐集にあたって資金的援助をおこなっていたとされる五代武田長兵衛にゆかりのある武田科学振興財団・杏雨書屋が所蔵する。そこにふくまれる文献総数は約760点、そのほとんどが目録の題名程度でしか知られていなかった未精査の敦煌文献である。公開前から旧蔵者の目録やわずかに公開されていた古写真などによって、その姿をある程度まで調査可能であることが意識されたが、これまでは所蔵先の公表さえされないまま、内々に整理がすすめられてきた。
  そして2009年 3月に、『杏雨書屋蔵 敦煌秘笈 目録冊』(以下、『目録冊』)が刊行、つづいて同年10月に『杏雨書屋蔵 敦煌秘笈 影片冊一』、2010年4月には『杏雨書屋蔵 敦煌秘笈 影片冊二』(以下、『影片冊』)が刊行された。今後、一年に二、三冊ずつ、第九冊まで影片冊が刊行される予定ときく。莫高窟から持ち出されて各国に分蔵されたほとんどの敦煌文献はこの一世紀の間に次々と公開され、デジタル化そしてオンライン化という新たな整理段階にはいりつつあり、今後これほどの分量の未精査の敦煌文献の存在が一度に公表されることはおそらくないとおもわれる。本コレクションが研究者間で「最後の宝蔵」と呼ばれてきたゆえんである。
 これまでの研究によれば、杏雨書屋蔵「敦煌秘笈」は李盛鐸(1859-1934)旧蔵品を中心に清野謙次、富岡謙蔵、高楠順次郎旧蔵品やその他書肆などからの購入品で構成されていることがあきらかである。また、そうした資料の構成や蒐集を支えた武田氏の存在もあわせると、この資料群は羽田亨という東洋史学者と京都大学のある関西圏において集積されてきたものといってよいであろう。もちろん、それは中国文化の精華でありユーラシア史的文化遺産でもある敦煌文献という一大資料群に由来するわけである。(一部注記を削除、以下略)

※本稿にはすでに公開されている情報の整理により、760点弱の文献名一覧および参考資料一覧を付属する。蔵書印から推測される中国の旧蔵者についての情報なども付す。

※なおこのコレクションの存在は北京大学・栄新江教授によって早くから推察されており、栄教授は資料を実見されていないにもかかわらず、これまで的確な推論を積み重ねてこられた。それは各国に分蔵された敦煌文献の性格、経緯を知悉していたことによる。また『新修本草』に関する一連の拙稿には栄先生のご教示によるところがある。このブログに記して謝辞としたい。以下はとくに「敦煌秘笈」の性格を知る上で有用なものである。
 なお『海外敦煌吐魯番文献知見録』で直接、関係している箇所はわずか数行にすぎないが(高田時雄先生が関与されたようである)、そこにしめされた指摘を契機に、池田温先生による関係資料の紹介がおこなわれ、昨年の目録冊公開に至るまで半ば手探りの状態で研究が展開されてきたのである。

栄新江(著)『海外敦煌吐魯番文献知見録』、江西人民出版社、1996年
栄新江(著)『鳴沙集』、新文豊、1999年
栄新江(著)『辨偽与存真―敦煌学論集』、上海古籍出版社,2010年3月(『鳴沙集』の増補改訂版にあたるようである)

追記:本稿では先行研究に、落合俊典「李盛鐸と敦煌秘笈」、印度學佛教學研究 52(2)、2004を欠いている。http://ci.nii.ac.jp/naid/110002707180。ここに記して是非一読をおすすめすると同時に、後日の訂正を期したい。