新収 漢文と東アジア 他2010/10/22 21:35

金文京(著)『漢文と東アジア―訓読の文化圏』(岩波新書)、岩波書店、2010年8月
加地伸行(著)『漢文法基礎―本当にわかる漢文入門』(講談社学術文庫)講談社、2010年10月
吉川忠夫・船山徹(訳)『高僧伝』(4)(岩波文庫)、岩波書店、2010年9月
藤堂明保・竹田晃・影山輝國(訳注)『倭国伝』(講談社学術文庫)、講談社、2010年9月
山本忠尚(著)『高松塚・キトラ古墳の謎』吉川弘文館、2010年10月
榎本渉(著)『僧侶と海商たちの東シナ海』(講談社撰書メチエ)、講談社、2010年10月
林淳(著)『天文方と陰陽道』(日本史リブレット)、山川出版社、2006年

ここ数ヶ月に購入した新書、文庫本など。いずれもWeb上には情報がたくさんある。
 上から4冊目までは訓読、翻訳の技術を学ぶ際に参考になる点が少なくない。学生に紹介したり、回読用に購入したものもある。漢文法基礎は読みやすく得るところが少なくないので漢文訓読がはじめての学生にはよさそう。少々冗長。『漢文と東アジア』は間口は狭いのに実はすごい奥行きがある店のようで、自分には得るところが多いが、学部生には少々、きつそう。
 いずれの本も蘊蓄が深くて購入したはよいが、肝心な部分を吸収するには読書の時間がない。
 『高僧伝』『漢文と東アジア』『倭国伝』『高松塚・キトラ古墳』に北朝関係の記事がある。

新収 史学雑誌 第119編第9号2010/10/22 22:21

『史学雑誌』第119編第9号、2010年9月

堀内淳一、北魏における河内司馬氏―北朝貴族社会と南朝からの亡命者

魏晋南北朝いずれの時期にも関わる横断的な存在として、また南朝からの亡命者として司馬氏に注目している。今後どう展開させていくのか非常に興味深いテーマ。ただ北朝を「貴族社会」とよぶのには事前に一定の説明が必要な気もする。

 今年の史学会の概要が関連のブログでまだ紹介されてないようなので、宋代くらいまでのものを今回だけ抜粋してみる。(自分は別用で残念ながら拝聴できません)

11月6日(土)
 シンポジウム「越境する歴史学と歴史認識」
  古畑徹、渤海国をめぐる日中韓の歴史認識
11月7日(日)
 部会・東洋史部会
  会田大輔、令狐徳棻等撰『周書』の北周像の形成―隋唐初の諸史史料との比較を通じて
  福永善隆、内朝の形成―宮中諸官の変遷を中心として
  藤野月子、和蕃公主の降嫁における儀礼について
  林美希、唐代前期における北衙禁軍の展開と宮廷政変
  鄭東俊、古代東アジアにおける律令の伝播と変容についての試論―高句麗・百済律令における所謂「泰始律令継受説」をめぐって

史学会(大会・例会案内)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/hsj/annnai.html

「マニ教「宇宙図」」の余波2010/10/22 23:27

 要するに朝日新聞の記者が共同通信の「マニ教「宇宙図」」に関する学芸記事を「剽窃」して、自社用の記事を書いてしまったという事件のようである。

朝日、記事が共同通信に酷似し謝罪
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101022-OYT1T00977.htm?from=main5 (読売新聞)

マニ教「宇宙図」確認 国内現存、謎解きに期待
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201010190109.html(朝日新聞、謝罪の追記入り)

 ただ、そもそも取材源は同じなので内容が近いのは当然で、そのこと自体には問題はない。Webの朝日の謝罪記事の説明だとなにがまずいのか、わかりにくい印象をうける。おそらくかなり多くの箇所の「表現」が酷似していて、文章が「剽窃」されているという印象をあたえたものとおもわれるが、私は問題の朝日新聞(19日付朝刊文化面)が手近にないのでよくわからない。Web版は簡略化されている様子で、当該の記事ではないようだ。
 この記事は共同通信配信でなく独自に取材して書いたことになっているので問題になったわけだが、大新聞や地方紙に共同通信の記事が提供されていることは結構ある気がする。
 この調子では今後、情報源が淘汰されていくのは避けられない。
 是非、新聞社は記者として歴史の文献読解(別に近現代に限らない)の専門教育をうけた学生を積極的に採用いただきたいと思うのだが。

関係する論文はこちら。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/07/01/5195452