新収 金剛寺一切経の総合的研究と金剛寺聖教の基礎的研究2007/06/28 20:57

落合俊典(研究代表者)、『金剛寺一切経の総合的研究と金剛寺聖教の基礎的研究』(平成16~18年度科学研究費補助金基盤研究(A)研究成果報告書。

落合先生からいただいた。ありがとうございました。第1分冊と第2分冊にわかれ、第1分冊は研究編、第2分冊は目録編となっている。ともに600ページを越えたすごいボリュームである。

なお、平成12~15年度に『金剛寺一切経の基礎的研究と新出仏典の研究』という報告書もだされている。

以下、その12~15年度の報告書から一文を引用して金剛寺一切経について簡単にまとめた。(宇都宮啓吾「金剛寺一切経のデジタルアーカイブ化について」より)

 大阪府河内長野市の古刹、天野山金剛寺は真言宗御室派の大本山で女人高野として知られ、多くの文化財を所蔵していることでも知られる。この金剛寺には平安時代後期から鎌倉時代を中心に書写された一切経四千数百巻が存する。本一切経中最古の奥書としては『大般若経』巻第四百の承暦三年(一〇七七)のものが存するが、古いものとしてはその他に、平安時代前期の写経を初めとしてそれ以降、平安時代後期から鎌倉時代前期にかけて盛んに書写が行なわれ、鎌倉時代後期までにかけて書写されたものと考えられる。(引用終)

 「女人高野」というと、あの有名な・・・という人の頭に浮かんでいるのはたぶん「室生寺」。 「女人高野」と呼ばれる寺はほかにもいくつかあるようだ。
 それはともかくこの一文からわかるように金剛寺一切経とは9-12世紀の日本における貴重な写本群のひとつらしい。また、この一文につづいてその奥書、訓点などは歴史学、国語学などの分野からも注目されてきたことが述べられている。(奥書については12~15年度の報告書にまとめられている)

 その意味では敦煌の写経に似た東アジア写本群のひとつともいってよいのだろう。同時に今回の第1分冊の研究篇では、敦煌文献と対比すべきものがあることや、唐代の仏教史研究に新しい一頁を開く資料があることなどがあきらかにされており、中国の仏典、歴史研究にも影響を与える存在としても位置づけられたといえる。また報告書に示されているようにデジタルアーカイブ化や目録化、翻字、解説によってかなり可視的にこれらの存在をしらしめ、活用の利便をはかられたことになる。
 書写された資料を扱う者に参考になる点は非常に多いように思った。
圧巻なのは一切経に用いられた紙の幅が1紙1紙すべて記録されていることである(第2分冊)。

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