書棚2007/07/01 13:14

となりの達人:売れる書棚作って36年 ジュンク堂書店・田口久美子さん/上

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/tatujin/news/20070327ddm008020167000c.html 
(中)(下)もリンク先にあり。
http://www.junkudo.co.jp/niigataten-huukei.html

 90年代を東京の西武線沿線で過ごしたが、その間、一番好きな書店は古本屋をのぞけば、池袋リブロだった。それなりに売り場面積はひろいが、東京一というわけでもない。たぶん、5,6位くらいだったのだろう。特徴的なのは品揃えが個性的に感じられるのに読みたい本が見つかることだった。この書店に行くために池袋をおとずれることはよくあった。
 それはまさに「江戸川乱歩の本は、推理小説ではなく幻想文学の棚に置」(記事の(下)を参照)かれていたことにあった。ツボである。

 そのうち近くにジュンク堂ができ、そちらのほうにいくようになった。ジュンク堂は専門書がずらっとならび大規模な図書館同様、知らなかった本に出会える確率が高かったからであり、それは書店のそういう販売戦略の引力によるのだと思っていた。

 しかし、この記事を読むと、どうもいずれもこの人の書棚の本の配置に魅力があったのかもしれない。

 ある著者や分野に関心を持つと関係書をよみあさるということは誰でもよくあると思うが、しばらくすると意外に関係ないと思っていた分野と関係性がでてくることもまたよくあるだろう。もし書棚にそういう関係書まで少しでも目配りした仕掛けがされていたら・・・・。ある書店で本を「発見」するとずいぶん「自分で利口」になった気分になるのでリピーターになる可能性は高い。

 つまり、私にとって書店の最大の魅力は、実は本ではなくて「発見」体験であり、書棚と本の配置にあったようだ。ベストセラーなんか全然読まないか立ち読みですます私にはそういうコーナーを大きく設けている書店に興味がもてなかったのは当然である。また日本十進法にならべてみても新しいことやおもしろいことは「発見」しにくい。それはおもしろさや新規性は大抵、既存の分類から逸脱した意外な関係性に潜んでいるからだろう。

 店舗を持たないネット書店のおかげで大型書店はふりに思えるが、量の勝負でなく、知の配列をどうみせるかという点ではいまだに売り場をもつ書店にもメリットはある。

 売れる本を店頭につみあげれば一時的に人はくるのだとおもうが、いつしかそういう人の目は大型のリサイクル書店に向かうだろう。価値を売ることができるということは価値を知っているということだなと納得した記事だった。