新収 菜根譚2010/03/04 18:14

湯浅邦弘(著)『菜根譚-中国の処世訓』(中公新書)、中央公論社、2010年2月。

 最初、タイトルをみたとき、これまでの著者のカバー範囲と異なる気がして、意外さを感じたが、実際、目を通してみると新しい切り口の菜根譚の解説書という感じで読みやすい。
 明代の書籍を解説するのに、一見関係がないようにおもえる楚簡・秦簡と近世大阪の懐徳堂の研究をまじえながら、隠し味に兵書という具合か。菜根の咀嚼力に驚嘆。

http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/04/21/4258131
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2007/11/18/2445236

拝受 チンギス・カンの戒め2010/03/04 18:49

白石典之(編)『チンギス・カンの戒め-モンゴル草原と地球環境問題』、同成社、2010年2月。

白石先生からいただいた。ありがとうございました。副題通りの内容。
執筆者は編者もいれると14名。(人数:修正しました)

松井先生のAbita Qur に同成社の紹介ページがリンクされている(追記)。
http://dmatsui.cocolog-nifty.com/abitaqur/

「私たちの目論みは、むずかしい方法や理論を提示すること、あるいは高額な機材を供与したり、莫大な資金を要するプロジェクトを組織したりすることではない。モンゴル高原に暮らす人びとに、祖先が草原とどのように向き合っていたかを思い出してもらい、もう一度草原を見つめ直してほしい、というメッセージを発信することだ」(はじめに、より)

新収 日本文庫史研究2010/03/04 19:34

小野則秋(著)『日本文庫史研究』上・下、臨川書店、1988年(改訂版三刷)

 日本の蔵書史研究の名著。戦前に出された一冊本もあって、内容には若干、異同がある。
 驚いたことに勤務先の図書館には上巻しかなくて、しばしば上京した際に某大図書館で下巻をみていたが、半年ほど前にたえきれずに購入。藩校の筆頭は米沢藩。
 この他に藩校毎の思想的総合的な研究をなした笠井助治の大著三点もあるが、実は文部省が明治初期に各県に出させた膨大な資料からなる『日本教育史資料』を批判的に読んでいくと、これら近世部分は結構書ける気もする。もちろん「批判的に」「肉付け」が、大変な作業な訳だが、その枠組みを大きく越えていないようにおもわれる。最近の県史や市史の記述もここにネタがあることがある。
 では実際にそれら文庫のどのような典籍が残っているのかが専門の研究者によって調べられたのはおおかたは戦後の話である。米沢の場合は少し古くて(經籍訪古志までいれると「かなり」か)、昭和四年に小川琢治、昭和十八年に武内義雄と中国学の研究者が続々と調査にはいったのが目立つ(川瀬のような文献学者も調査している)。それが昭和三十三年の内田智雄(編)『米沢善本の研究と解題』につながったわけである。
 ではそこ(個々の典籍)から、これまでの枠組みを検証しなおすと中国学でも書誌学でもない知識と社会の新たな関係がみえてくるのではないか。そうおもって自分はどのような典籍が「あったのか」「どう変遷したのか」を調べたわけである。
 実は敦煌文献というのも大半は典籍であって、その典籍が典籍としての意味をもっていた空間へと遡る方法はかなり相似する(はず)である。