新収 輔行訣五蔵用薬法要伝承集2011/08/02 21:14

陶弘景(撰)張大昌・銭超塵(主編)『輔行訣五蔵用薬法要伝承集』、学苑出版社、2008年9月。

遅ればせながら購入。『輔行訣五蔵用薬法要』は敦煌医薬文献の一点とされるもの。張偓南氏が1918年に得て、孫の張大昌氏に伝えられたが、原巻は文革中に失われ、その内容を張氏やその弟子たちが書写した抄本数種が今に伝えられている。この本はその抄本21種(!)を収録し、考察をくわえたもの。抄本の写真も多数載せられている(ただし達筆すぎて読めないものが多い)。最初に公刊されたのは1998年の『敦煌医薬文献輯校』に収録されたもので、小曽戸先生の著書にも言及がある。内容的に見て唐代の処方の可能性が高いものが多数含まれるとされる。文革で破壊された文化財の一例と言えるが、この復原作業は失われた文化財をとりもどそうとするだけでなく、そこで失われた自分たちの時間をも取り返そうとする執念そのものにも思える。

王雪苔(編著)『輔行訣五蔵用薬法要校注考証』、人民軍医出版社、2010年5月(四刷)。

以上の抄本のうちとくに古いと思われる二点からテキストを作成、校注および考証を付したもの。前掲伝承集は本書に言及しており、一刷は2008年前半に刊行されたはずだが、なぜか第一次印刷の時期が省略されているので上記のようになった。なお、Webで調べた限りでは著者は鍼灸の大家として世界的に認知されており、日本語も学んでいた親日家であったようだが、2008年9月に歿している。

なお天漢日乗さんの「超あやしい敦煌写本」エントリーが参考になる。  どんな国の文化財であろうと、また悲劇的に破壊されたものであろうとそれを残して検証していくことが未来のためになるのだとは思う。

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