拙稿 敦煌本「霸史」再考2010/04/03 03:07

岩本篤志、敦煌本「霸史」再考-杏雨書屋蔵・敦煌秘笈『十六国春秋』断片考、『資料学研究』第7号、27 ~62 頁、2010年3月。

「ただ北魏・崔鴻撰『十六国春秋』は南宋期にはすでに佚書となり、現在、諸書に引用されている佚文を見渡しても、どれが原本からの正確な引用か必ずしもあきらかではない。また現存する『十六国春秋』の類はいずれも、明代以降に屠喬孫や湯球によって整理されたもので、崔鴻の原本を復原したものではない。もし、「敦煌秘笈」の三断片が『十六国春秋』か、それに近い霸史類に由来するのであれば、五胡十六国期の研究においても、唐代以前の史書編纂や歴史観を考える上で新しい知見をえる手がかりになるとおもわれる。」

拙稿 新発田藩の蔵書目録について2010/04/03 03:01

岩本篤志、新発田藩の蔵書目録について-九代藩主・溝口直侯の「本草学」との関係を中心に、『環日本海研究年報』第17号、104~117頁、2010年3月。

「九代溝口直侯の廟号を冠する書目とその由来書であり、直侯が本草学に強い関心を抱いていた様子や藩の学問への考えをうかがうことができる。これまでに後者は読書記録の研究資料としてもちいられたが 、新発田藩の蔵書形成史における位置づけはあきらかにされておらず、前者は管見の限り言及されたことがない。
 本稿は栗田の示した資料にこれら新出資料をくわえ、新発田藩の旧蔵書群のあらましをあらためて把握しようとこころみたものである。」
 やや蕪雑な感じできれいにまとまっていない。後で書き直したい気もするがいつになるだろうか。

環日本海研究年報 第17号2010/03/31 22:38

『環日本海研究年報』 第17号、新潟大学現代社会文化研究科、2010年3月。

 収録論文10本。内訳は2009年11月におこなわれた国際ワークショップ「東北アジアにおける社会的生活基盤の形成」の3セッションのうち第2セッション「朝鮮における社会的生活基盤の形成」の論文が4点(執筆:金永白、山内民博、広瀬貞三、橋谷弘、大宮誠)。なお、その他セッション分は前掲『環東アジア研究センター年報』第5号に収録されている。
 これ以外に「東北アジア地域史の諸相〔I〕」の特集が組まれ、論文3本(内田宏美、芳井研一、陳祥)、そしてそのほかに通常投稿論文が3本(井村哲郎、岩本、高慶元)で、合計10本である。
 『環日本海』『環東アジア』両誌にわたり、論文14本を展開した国際ワークショップの中心的論文が、芳井研一「東北アジア地域の社会的生活基盤の形成」(『環東アジア』第5号)ということのようである。
 この2誌収録論文の主要キーワードは「東北アジア、満鉄、満洲、都市港湾建設、環境保全」というところで東北アジア近現代史に関する論文が過半をしめる。

 ここではあえてあきらかに異質な三点を紹介しておこう。

内田宏美、唐代室韋墓葬と森林ステップ-“角弓”の分析を中心に
岩本篤志、新発田藩の蔵書目録について-九代藩主・溝口直侯の「本草学」との関係を中心に
高慶元、外国人研修制度の実態と課題

http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/03/02/4916926

新収 資料学研究 第7号2010/03/26 19:09

『資料学研究』第7号、新潟大学大学院現代社会文化研究科プロジェクト「大域的文化システムの再構築に関する資料学的研究」、2010年3月。

堀健彦、平安越後古図の分類試論
岩本篤志、敦煌本「霸史」再考-杏雨書屋蔵・敦煌秘笈『十六国春秋』断片考
矢田俊文・卜部厚志、1828年三条地震による被害分布と震源域の再検討
高橋秀樹、ペイシストラトス第二次政権獲得時におけるピュエのエピソード-歴史的記憶の政治的機能とその破綻-
山内民博、朝鮮後期戸籍大帳僧戸秩及び新式戸籍僧籍の性格(下)
關尾史郎、南京出土の名刺簡について-「魏晋「名刺簡」ノート」補遺-

新刊 五胡十六国霸史輯佚2010/03/23 18:04

新潟大学大域プロジェクト研究資料叢刊XVI、『五胡十六国霸史輯佚(稿)』、新潟大学「東部ユーラシア周縁世界の文化システムに関する資料学的研究」、2010年 2月。総313頁。

(主編)關尾史郎・岩本篤志
(編集分担) 市来弘志・小林 聡・町田隆吉・三﨑良章・山口 洋・会田大輔・梶山智史・園田俊介・平田陽一郎・堀井裕之・峰雪幸人・山下将司
(発行者) 新潟大学「東部ユーラシア周縁世界の文化システムに関する資料学的研究」
新潟大学人文学部東洋文化史研究室/ http://goko.bakufu.org(五胡の会)

「本書は、五胡十六国期の霸史の佚文(1920条余)を引用した典籍別に整理したものである。なお『鄴中記』など五胡十六国史研究に無関係でない典籍も採録した。
 霸史佚文ごとに番号を付し、霸史解説、典籍解題、各種索引を作成することで、五胡十六国史やそれに関する典籍の理解を深めることが可能なように配慮した。」 (凡例より)

1. 「覇史」の概要とその佚文蒐集の意義について(關尾史郎)
2. 引用典籍解題 (編者分担)
3. 霸史佚文
4. 霸史名索引
5. 五胡十六国君主名索引
6. 湯球輯『十六国春秋輯補』引書索引

※大型類書や仏教類書のほか新出の敦煌文献などにまで目を配った最新の成果です。
※研究者から意見をいただくことを目的とした刊行ということで、該当時代の研究者もしくはそうした研究者の所属大学図書館、研究図書館、関連学会での配布などに限定させていただきます。
※一部の編集分担者および協力者の方々にはまだお渡しできていません。また早速、何カ所か修正すべき箇所がみつかっております。後日、修正をアップします。次のサイトにも書き込みます。http://gokos.blog.shinobi.jp/

新刊 米沢藩興譲館書目集成 全4巻2009/09/03 04:21

朝倉治彦(監修) 岩本篤志(編集・解説) 青木昭博 (解説) 『米沢藩興譲館書目集成』 全4巻 、ゆまに書房、2009年8月。

直江兼続の蒐書にはじまるといわれる米沢藩ゆかりの蔵書目録を集成。その蔵書はいまなお、米沢の地に伝わり、中世の学問の息吹や上杉鷹山によって設立された興譲館や好生堂といった近世を代表する学問所の気風を伝えている。往時の蔵書の全貌とその変遷とに接近することを可能とした貴重な書目集。

●藩校興譲館や江戸藩邸など関係各所で作成された元禄期から昭和初期にいたる主要な書目を収録。書目には貸借記録や書籍に関する注記が付されていることもあり、書誌学的、史料的価値が高い。

●これまでほとんど研究に利用されてこなかった書目(四目録、林泉文庫寄贈書及書目)を収録しており、藩の蔵書管理や書籍の聚散過程があきらかになる。

●個々の書籍の来歴や蔵書群の形成を把握しやすくするため、主要書目を対象とした書名索引を付した。米沢藩旧蔵書の研究のほか、近世大名の蔵書や藩校研究等にも至便である。

http://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843332504

【訂正】 (今後も追加します)
・第3巻 索引 p.23 「つ」の見出しをいれる。
・第3巻 索引 「邸」のページ数が該当巻(第1巻)のノンブルと1頁ずつズレている。
・第3巻 索引 党陰比事→棠陰比事
・第4巻 p.562/12行目 (誤)「麻谷蔵書」→(正)「麻谷藏書」
・第4巻 p.564 (誤)東北諸藩における蒐集→(正)東北諸藩における蒐書

新収 環日本海研究年報 第16号2009/04/10 23:26

『環日本海研究年報』 第16号、2009年2月。

關尾史郎、「五胡」時代の墓誌とその周辺
佐藤貴保、西夏語文献における「首領」の用例についてー法令集『天盛禁令』の条文から
岩本篤志、清水彦介撰『入学読書図説』と興讓館蔵書ー四部分類の導入に関連して
芳井研一、柳城湖事件直後の現地社会と住民状況
柴田幹夫、大谷光瑞と満州
名古屋貢、帝国議会で追及された兵器商社泰平組合
藤田益子、『児女英雄伝』における“被”構文-『敦煌変文』『紅楼夢』との対照による考察

この他5点(島田敦史・櫛谷圭司、應隽、LEE,Jum-Soon、王緝思・真水康樹、諸橋邦彦・坪野和子)。

新刊 『直江兼続』高志書院刊2009/02/22 18:23

矢田俊文(編)『直江兼続』高志書院、2008年2月。

越後・会津時代
 1 上杉謙信・景勝と直江家…………………前嶋 敏
 2 直江兼続と一族・家中……………………片桐昭彦
 3 直江兼続と関ヶ原合戦……………………高橋 充
 〈コラム〉戦と宴の日々………………………高桑 登
 〈コラム〉「幻の白河決戦」と上杉氏の城……石田明夫
 4 兼続と「直江状」…………………………木村康裕
 〈コラム〉解題「長谷堂合戦図屏風」………………高橋 修

米沢時代
 1 江戸幕府と直江兼続…………………………阿部哲人
 2 米沢城と城下町………………………………青木昭博
 〈コラム〉直江兼続が掘った堀……………………高桑 登
 3 『文鑑』と『軍法』―直江兼続と漢籍―…………岩本篤志
 4 直江後室おせんと米沢藩………………………矢田俊文
 〈コラム〉おせんと兼続………… ………………浅倉有子

高志書院  http://www.koshi-s.jp/shinkan/090115_1-shinkan.htm
ジュンク堂  http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0011038240
紀伊國屋書店 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4862150535.html
bk-1  http://www.bk1.jp/product/03089557
アマゾン http://www.amazon.co.jp/dp/4862150535
六一書房 http://www.book61.co.jp/book_html/N03268/

-------------------------------------------
 私以外は上杉氏関連では定評ある執筆陣である。入門書ではない。どちらかというと論文集に近い。だからかなり歯ごたえがあるはずだ。
 しかし、そこまで調べられるだけの史資料が現存し、まだまだ研究者さえ未踏の場所があることに気づいてほしいところである。
 日本のおもしろさはまだまだ掘り尽くされていない。そこにはアジアが眠っている。それが僕のパートの役割である。
 
(補記)直江版『文選』の「活字」について

 一般に直江版『文選』は「日本最初の銅活字版」などとされるが、あきらかな誤りである。
 拙稿では直江版『文選』が家康の活字印刷などより後になることを提示しつつ、「銅活字本をつくらせたとされる」とした。
 しかし、おおかたの学術書は「活字版」とするにとどまり、今回、多くを依拠した川瀬氏の研究にも活字の種類について明記した箇所を確認できない。なお、川瀬氏は直江の片腕であった涸轍が朝鮮半島からもってきた銅活字をもちいて出版をおこなっていた可能性などに言及しているがそれが直江版とはしていない。この時期の活字版で銅活字をもちいた例はきわめて稀とされており、直江版『文選』も木活字による印刷である可能性が高い。
 この分野ではまずみるべき『日本古典籍書誌学辞典』は、直江版『文選』を「木活字」と明記していることを付記しておく。

遅参-上杉家と直江兼続の実像2009/01/27 03:41

後世の物語や伝承の世界ではなく、同時代の史料を駆使した本書によって、初めて新しい上杉家と直江兼続の実像が明らかになる。・・・・・待刊。
http://www.koshi-s.jp/shinkan/090115_1-shinkan.htm

ちなみに『円仁とその時代』が同出版社から同時刊行。
http://www.koshi-s.jp/shinkan/090115_2-shinkan.htm

高志書院
http://www.koshi-s.jp/

拙稿 唐『新修本草』編纂と土貢2008/12/26 19:38

岩本篤志、唐『新修本草』編纂と「土貢」-中国国家図書館蔵断片考,2008年9月,東洋学報,第90巻第2号,113~143頁.

 敦煌本『新修本草』序例と天聖医疾令の分析から、「右監門長史」蘇敬が本草書編纂の中心となった意味とそれに関わる唐朝のシステムを論じたものです。 

 あまりの多忙さにただでさえ低い処理能力がおいつかず、是非読んでいただきたい方々にさえ郵送できない状況がつづいてましたが、ようやく数人の方々に発送することができました。ご意見いただければ幸いです。まだまだお渡ししなくてはならない人がいますが来年早々にも。

 なお、今年は身内に不幸があったため、来年の新年の挨拶は控えさせていただきます。
 まだ購入した本が書ききれてないのですが、たぶんこのエントリが今年の最後でしょう。今日は悪天候で、本当に寒い上に眩暈がしてきました。しばし、温暖な故郷にもどり、休むとします。