拝受 中国古代の社会と黄河2009/05/01 18:09

濱川栄(著)『中国古代の社会と黄河』(早稲田大学学術叢書)、早稲田大学出版部、2009年3月。

濱川さんからいただいた。ありがとうございました。秦漢代から南北朝時代(特に華北)の研究者は必読書といってよいであろう。フィールドワークの成果もとりいれられている。

「本書は周知のように見えて実は不明な点の多い黄河の歴史的影響を、主に前漢代を中心にさまざまな視点から考察した試論の集積である」(第一部 はじめに、より)

第一部 中国古代帝国の成立に果たした黄河の役割
 第一章 「水の理論」をめぐる学説史の流れ
 第二章 黄河変遷史概観

第二部 戦国・秦代の大規模灌漑機構をめぐる諸問題
 第一章 漳水渠の建造者をめぐる二説について
 第二章 鄭国渠の灌漑効果とその評価をめぐる問題について

第三部 前漢時代の黄河問題とその影響
 第一章 瓠子の「河決」  ―前漢・武帝期の黄河の決壊
 第二章 瓠子の「河決」と武帝の抑商
 第三章 徙民七〇万人と黄土高原
       ―前漢・武帝期における黄土高原の環境と開発
 補論  ト式再考 ―漢代の一牧羊業者の実像を求めて

第四部 両漢交替期の黄河問題と社会状況
 第一章 両漢交替期の黄河の決壊について
 第二章 両漢交替期の黄河の決壊と劉秀政権
 第三章 五行志と溝洫志 ―『漢書』の河災記事に関する一試論

第五部 「王景の治水」以降の黄河下流域と黄河問題
 第一章 『水経注』に見える「絶」について
       ―漢~北魏時代の黄河下流域の環境と社会
 第二章 漢唐間の河災の減少とその原因
       ―譚其驤説をめぐる最近の議論によせて
 終章  黄河と中国古代史
       ―特に黄河下流域という「空間」の古代帝国形成期における意義について

早稲田大学出版部 http://www.waseda-up.co.jp/library/post-555.html
Amazon http://www.amazon.co.jp/dp/4657094025

新収 『東方学』第117号2009/02/27 00:12

『東方学』第117号

中田美絵、五臺山文殊信仰と王権
吉永匡史、律令関制度の構造と特質
孟 彦弘(辻正博訳)、唐代の「副過所」及び過所の「副白」「録白案記」辨析
中島楽章、西洋渡航朱印状について

自分が興味を持ったのは以上の論文。
中田論文は「東部ユーラシアの王権イデオロギーの歴史的展開」に新しい知見を加えようとするもの。吉永論文は天聖令とくに関市令をもちいた日唐令の研究。

新収 中国文物地図集 山東分冊 上・下2009/01/27 20:06

国家文物局(主編)『中国文物地図集 山東分冊』 上・下、中国地図出版社、2007年12月。

拝受 天と地-前近代の中国における都市と王権ー他2009/01/16 17:49

妹尾達彦、長安への旅、『NHKスペシャル新シルクロード5ーカシュガル・西安』、2005年。
妹尾達彦、中国の都城とアジア世界、『記念的建造物の成立』東京大学出版会、2006年2月。
妹尾達彦、宋代史研究の最前線に接して、『宋代社会の空間とコミュニケーション』汲古書院、2006年6月。
妹尾達彦、都の立地ー中国大陸の事例ー、『人文研紀要(中央大学)』第58号、2006年9月。
妹尾達彦、都市と環境の歴史学ー黄土高原にてー、『史学雑誌』第116編第9号、2007年。
妹尾達彦、天と地-前近代の中国における都市と王権ー、『中国の王権と都市ー比較史の観点から』大阪市立大学、2007年3月。
妹尾達彦、都城与王権礼儀:根拠中国歴代都城復元図、『基調与変奏-七至二十世紀的中国』国立政治大学歴史学系他、2008年。
妹尾達彦、都城と律令制、『日唐律令比較研究の新段階』(史学会シンポジウム叢書)山川出版社、2008年10月。

妹尾先生からいただいた。ありがとうございました。
 いずれも都市史という範囲にとどまらず、ユーラシア大陸という空間のなかにおける都市、または中国史という時空間の中の都市という観点から論が展開されている。「都の立地」には考証学者の趙翼による地気の変化からみた王都論について論じられており、興味深い。

新収 西域地名考録2008/12/08 18:59

鐘興麒(編著)『西域地名考録』国家図書館出版社、2008年9月。

近現代史料まで視野に入れて西域の地名を考察したもの。中文に翻訳された外国の著書もその参照資料に含まれている。ピンイン排列で画数索引がありつかいやすい。とりあえず試しにつかってみることにしたい。

拝受 清末成立の四川からチベットへのルートを描いた程站絵図の基礎的研究2008/11/12 22:43

片山章雄(代表)『清末成立の四川からチベットへのルートを描いた程站絵図の基礎的研究― 横浜の『自鑪庁至烏斯蔵程站輿図』と北京の『自打箭鑪至前後蔵途程図』の比較』(2007年度東海大学学部等研究教育補助金(文学部)による研究成果報告書)、2008年。

片山先生からいただいた。ありがとうございました。
19世紀後半から20世紀初頭の知識をもとにつくられた清朝時代の四川からチベットの状況を知る史料。題名の横浜は「横浜ユーラシア文化館」、北京は「中国国家図書館」の所蔵を指す。

新収 朝鮮紀行2008/08/08 17:52

イザベラ・バード(著)、時岡敬子(訳)『朝鮮紀行-英国婦人の見た李朝末期』、講談社学術文庫、2005年。

1998年第1刷、2005年第15刷だから、この手の紀行もののなかでもかなり売れている部類にはいるようにおもわれる。

結構分厚いので、全部読み通す時間があるかどうかはわからない。けど読んでみたい。

新収 河口慧海日記2008/06/17 00:23

河口慧海(著)奥山直司(編)『河口慧海日記-ヒマラヤ・チベットの旅』講談社学術文庫、2007年5月。

 河口慧海『チベット旅行記』は非常におもしろく読めるが、もとは慧海の口述を筆記した新聞記事の連載であった。この本におさめるのは慧海自身が旅行で記録していたもので、2004年になって初めて広く知られるようになった日記だという。
 解説はその『旅行記』と日記の間をおっており、『旅行記』に書いて無くて日記に何が書いてあるのか、なぜ、その部分を連載には示さなかったのかなど、慧海その人の思いや配慮をよみとっている。また実際にヒマラヤ・チベットを走破してその足跡をたどっており、なかなか楽しい。

拝受 水経注疏訳注 渭水篇(上)2008/05/23 21:29

中国古代地域史研究班『水経注疏訳注・渭水篇(上)』(東洋文庫論叢第71)、財団法人東洋文庫、2008年3月。

財団法人東洋文庫(中国古代地域史研究班)からいただいた。ありがとうございました。本巻は『水経注疏』巻一七・渭水上、『水経注疏』巻一八・渭水中を収録する。

太田幸男、序言
山元貴尚、『水経』・『水経注』・『水経注疏』について
塩沢裕仁、『水経注疏』と歴史地理情報
  ー天水地域における現地調査と地域空間の理解
窪添慶文、酈道元の生きた時代
藤田忠、『水経注』関係論文目録稿

訳注部分は、凡例、日本語訳、『水経注疏』の影印、索引からなる。
索引以外で463頁。索引が36頁。

以前からこうした作業が進められていたことは聞いていたが、ついに刊行が始まった。
http://www.toyo-bunko.or.jp/research/zenkindaichugokuken/kodaichiikishi.html

なお以前、陳橋駅氏の研究をとりあげたので、ここにあげておく。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2007/10/16/1856263

新収 地中海世界のイスラム2008/05/22 19:52

W.モンゴメリ.ワット(著)三木亘(訳)、『地中海世界のイスラムーヨーロッパとの出会い』(ちくま学芸文庫)、筑摩書房、2008年5月。

 かつて使用した『世界史』の教科書にはピレンヌテーゼがのっていた。「マホメット無くしてシャルルマーニュ無し」というものである。そのおおもとの論文の翻訳は佐々木克巳(編訳)『古代から中世へ-ピレンヌ学説とその継承』で読める。
 『地中海世界のイスラム』はそれとは逆にイスラム側からヨーロッパを見る視点で書かれているようだ。読みやすい翻訳。

「科学と哲学の分野でヨーロッパを知的に刺激したばかりではない、イスラムはヨーロッパを挑発して新しいおのれの像を形づくらせたのである。ヨーロッパはイスラムに反発しつつあったからこそサラセン人の影響を軽んじて、ギリシアとローマの遺産への依存を誇大視したのである」(P.166)

なんか十分にカテゴリ分類を準備してなかったのだが、あえて分類すれば「世界史」であろうか。