新収 魏晋南北朝覇府与覇府政治研究他2007/10/10 21:43

陶賢都(著)『魏晋南北朝覇府与覇府政治研究』、湖南人民出版社、2007年3月。
高栄(著)『先秦漢魏河西史略』、天津古籍出版社、2007年1月。

http://mitsuda.blogtribe.org/category-e0a7cd8301cd87d7c2d04aaaaed1252c.html
http://sekio516.exblog.jp/tb/6535908

すでに他のブログに紹介があがっている。ただともに日本人の研究は参照しておらず、また概説的である。本書に限らないことで、彼の地の出版慣行では「大観をつかんでいる」ことが価値なのだとも仄聞する。
 『先秦漢魏河西史略』は最終章は「河西漢晋簡牘」で興味深いが、これも概観を示した感じにとどまっている。

拝受 北斉祖珽考2007/10/12 19:38

稲住哲朗「北斉祖珽考―その政治姿勢を中心として―」、『東洋学報』第89巻第2号、2007年9月。

稲住さんからいただいた。ありがとうございました。
 祖珽は北斉後期の激動の中、浮沈をくりかえし、宰相ともなった人物。同時代人の顔之推などと対比しても興味深い存在である。稲住氏はそうした点もふまえ、彼の政治的立場や振る舞いから「五胡十六国から北朝への歴史展開を受けた「重層的な」意識」を読み取ろうとしている。

新収 中国思想史2007/10/12 20:31

溝口雄三、池田知久、小島毅『中国思想史』、東京大学出版会、2007年9月。

 興味深い構成、内容。
 ただ「はしがき」の「これまで中国の歴史は往々、外来の、つまりヨーロッパの、ときにはヨーロッパ化した日本の概念や枠組みで組み立てられてきた」という一文にはかなり違和感をもった。

 むしろ「中国思想史」の概説は往々にして著名な思想家の列伝であるかのような感じがあったと思う。だから本書のような形で歴史の流れの中に位置づけようとしたことは非常に有意義なことにおもったのだが。

大学生協で棚積みされているのを見たと思ったら翌日にはすべて無くなっていた。ようやく入手。
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-012056-2.html

新収 武田信玄と勝頼2007/10/12 21:34

鴨川達夫『武田信玄と勝頼-文書に見る戦国大名の実像』(岩波新書・赤)、岩波書店、2007年3月。

 主題通り、信玄と勝頼の人間くささがうかがえる箇所もあるが、「文書と真剣に向き合うこと」は「神経を張り詰めながらも肩の力を抜いて、頭でっかちにならないように気をつけること」が伝わってくる本である。
 文書の真偽の判別について書かれているくだりも技術として興味深い。

新収 水経注校証2007/10/16 22:12

陳橋駅校証『水経注校証』、中華書局、2007年7月。

 北魏・酈道元撰『水経注』はそれまでに存在した『水経』に注をつけたもので、河川を基軸とした地理書である。ただ、宋代までに散佚がすすむと同時に本文と注の区別がつかなくなったとされる。
 それで今までに様々な研究、テキストが作成され、本書の序にもあるように『水経注』研究を意味する「酈学」なる言葉まである。(こうした状況は『本草経集注』等にも似ている)

 一般に優れた注釈のついた楊守敬・熊会貞『水経注疏』(江蘇古籍出版社本などがある)が便利とされてきたが、陳氏の解説によれば『水経注疏』は底本がよくないという。そこで本書は最良の底本である武英殿本に由来する四部叢刊本をもちい、さらにこれまでの日本や中国で行われてきた研究を参照の上、テキストを作成したとのことである。
 なお、著者には『水経注』に関する著作が多数ある。

 その整理過程を十分検証したわけではないが、研究とは何年もかかってようやく一つの形をなすものだと実感させられる。

新収 中国古兵器論叢2007/10/16 23:00

楊泓(著)『中国古兵器論叢』(増訂本)、中国社会科学出版社、2007年4月。

殷周から五代宋くらいまでの様々な武具に関する論考13篇をのせる。膨大な考古資料を駆使している。1985年刊行の重印。なお本書には、1985年に刊行された日本語訳本(関西大学出版部)がある。

 信玄の次は『水経注』、その次は兵器。
 なんかずいぶん分野をちらけて読んでいるようだが、ある一つのことをじーっとみていても良いアイデアがうかぶ脳力をもちあわせていないのでこれが自分にはあっている。

 研究になにがしかの意外性がないならばその価値は低いということに他ならない。だから自分がすぐにわかるようなアイデアには書く価値を感じないし、ましてや他人に次を見すかされてしまうようでは文章を書くものとしては最悪である。もちろん意外性ばかりをおってると、「トンデモ」になる可能性があるが、「専門性」の高さを追求しているとしばしば根本的な発想で先行研究に盲従する可能性があることは怖い。先行研究があるないではなくて、問題のとらえ方、解決の思考法としてどう新しいか、それが問われるところだと思っている。
 
 理屈をこねるのは徐々にうまくなっているが、読んだことだけでなく、自分が書いたことすら忘れそうになるこの頃である。だから時系列整理、カテゴリ分類、串刺し検索をかねそなえ、適度な緊張感があって、かついい加減に書いても許される理想的なデータベースがこのブログである。

新収 宋以前医籍考2007/10/17 18:42

岡西為人『宋以前医籍考』(1)-(4)、進学書局、1969年。

1 醫經、2 經方(上)、3 經方(下)、4 本草・雜纂の4冊構成。

 宋代以前の医薬典籍研究において、すでに部分的にこれを上回る著書がいくつか登場しているが、総合性においてはいまだに最高の著作だと思う。今までコピーを参照してきたが、ようやく入手できた。再版を待ち望んでいたが、この本は満州国時代にもとがつくられたため、偽満扱いで事情が許さないとも聞く。しかしネットで見るとその内容は中国でも高く評価されている。おおくはPDF等の類で出回っているのであろう。
 1958年の人民衛生出版社本もあるようだが、進学書局本は台湾・古亭書屋の発行にかかり、岡西の自序と受業者であった那琦博士の跋文がつく。たぶん最良のテキストである。

 この『宋以前医籍考』からすると同著者の『本草概説』は概説入門書といってよい位置づけ。『重輯新修本草』や『中国医書本草考』もそうだが、その校勘の精度の高さ、漢籍の知識の該博さには目を見張るものがある。

真柳先生の以下のページが参考になる。
http://www.hum.ibaraki.ac.jp/mayanagi/paper03/shohyo2.htm
http://www.hum.ibaraki.ac.jp/mayanagi/picture/03-8cmu/lib.html

新収 勒柯克(A. von Le Coq)二書2007/10/18 22:30

勒柯克(著)、趙崇民(訳)、吉宝航(審校)『高昌-吐魯番古代芸術珍品』新疆人民出版社、1998年。
勒克科(著)、趙崇民・巫新華(訳)『中亜芸術与文化史図鑑』中国人民大学出版社、2005年。

松井先生のブログと森安先生のメールで知る。原著は以下のとおり。ともに図版がおおい。
(上)A. von Le Coq, Chotscho : Facsimile-Wiedergaben der wichtigeren Funde der ersten koniglich preussischen Expedition nach Turfan in Ost-Turkistan ,Berlin, 1913.
(下)A. von Le Coq,Bilderatlas zur Kunst und Kulturgeschichte Mittel-Asiens ,Berlin,1925.
 Le Coq氏の漢訳名は、音写だから厳密な必要はなかろうが、定まってないようだ。Webで見た限りは勒柯克のほうが優勢か。

『中亜芸術与文化史図鑑』は中央アジア出土品とササン朝のものとを比較しており非常に興味深い。ニケの姿もみえる。Le Coqの推測、手法は単純だが文化の伝播範囲を探る上で的確な点が多いようにおもわれた。ざっとみただけだが、Lauferの着眼点とも関係があるようである。

新収 五十二病方2007/10/19 17:43

小曾戸洋・長谷部英一・町泉寿郎、『五十二病方』(馬王堆出土文献訳注叢書)、東方書店、2007年7月。

http://www.toho-shoten.co.jp/jbook/maoutai.html

そもそも五十二病方が書かれていた帛書はどのような状態で読まれたのか、その出土状況を推測してあらためて訳注をやり直したという点で従来の訳注や釈文をこえるものとなっている。

新収 Codices Sogdiani2007/10/20 17:11

E.Benveniste,Codices Sogdiani : Manuscrits de la Bibliotheque nationale (Mission Pelliot) , Copenhague , Ejnar Munksgaard, 1940.

 フランス国立図書館が所蔵するソグド語文献の図録、解題。フランス語。解題の内容はすでに古くなっているのかもしれないが、代表的な図版ということで入手。
 高価な本であるが、国内の図書館には所蔵が少なく、見ることすら困難である。私はソグド語研究者ではないが、一見できないと困る事情があった。冒険的に購入にふみきった。

なお比較的、所蔵館の多い以下の本は複写で入手。
D.N. MacKenzie,The Buddhist Sogdian texts of the British Library, Teheran, Diffusion by E.J.Brill ,1976.

それと先に入手した一点。これでソグド語文献がのる主な図版はそろったようである。
Nicolas Sims-Williams、James Hamilton ,Documents turco-sogdiens du IXe-Xe siecle de Touen-houang ,London ,1990.

http://iwamoto.asablo.jp/blog/2007/09/18/1806002