拝受 図説 直江兼続 人と時代2010/04/05 22:14

阿部哲人(編)『図説 直江兼続 人と時代』、天地人博2009実行委員会・米沢上杉文化振興財団、2010年3月。
http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/museum_shop_zurokusyosai.htm#0901

阿部さんからいただいた。ありがとうございました。こちらの事情で少々手元に届くのが遅くなり、紹介が遅れた。「天地人博2009」で企画展示された資料の内、320点を収載。フルカラーで十分すぎるほどのコンテンツである。

2007年にも図録『特別展 直江兼続』、米沢市上杉博物館(総127頁)が刊行されているが、その企画時は兼続の知名度は高いものでなく、まさかNHKドラマと重なるとは予期していなかった。某先生に「マニアックな」というお言葉をいただいた記憶がある。
 しかし、その後、関連資料は幅広く集められ、研究の精度もより高いものとなった。本図録は総351頁で2倍以上の増量となっており、写真も以前より大きく見やすい。小島毅、中野等、山田邦明、八鍬友広と寄稿している先生方の顔ぶれも豪華。

拝受 集諸經禮懺儀 巻下2010/03/11 19:05

『集諸經禮懺儀 巻下』(日本古写経善本叢刊)、国際仏教学大学院大学学術フロンティア実行委員会、2010年2月。非売品。

国際仏教学大学院大学学術フロンティア実行委員会からいただいた。ありがとうございました。

この書き込みをしている際にはまだ情報が出ていないが、下の頁に掲載されるはず。
http://www.icabs.ac.jp/frontia/publishing.html

本書はそこにPDFがリンクされている「いとくら」5号末尾に近刊として紹介されている。
  「第四輯では『集諸経礼懺儀』巻下と、それに関連する『往生礼讃偈』の諸伝本を紹介する。『集諸経礼懺儀』は『開元釈教録』の編者である唐、智昇(―730―)が長安で流行していた礼懺儀を上下二巻に集録したものであり、今回取り上げる巻下には、初唐の善導(613―681)『往生礼讃偈』(「往生礼讃」「六時礼讃」)が全文収められている。」

 また「あとがき」に次のような箇所がある。
「この形式こそ最初期に存した唐代長安仏教の写経本に他ならないと推測したのであるが、なかなか周囲の人たちには理解してもらえなかった。けれどもある日を境に周囲の認識は突然変わった。」

 いくつかの箇所で敦煌写経への言及(『集諸経礼懺儀』自体は敦煌本にはないが)もあって、その古写経としての体例が注目を浴びていることがわかると、俄然、解説がおもしろくなる。

 執筆者は上杉智英、能島覚、梶浦晋、落合俊典。

第三輯以前
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/03/27/4208610

新収 中世の書物と学問2010/01/04 02:13

小川剛生(著)『中世の書物と学問』(日本史リブレット78)、山川出版社、2009年12月。

 夏目漱石の著書などを引き合いに出しながら、日本の中世写本についての基礎知識を最新の知見を折りまぜながら、わかりやすく解説している。

 また 「日本文化を中国を中心とした世界秩序に位置づけようとする研究」への違和感が示されており、うなずける。
 中国と日本に同じ本があっても、同様に受容されているとは限らない。むしろ全くことなる可能性、個別の事情を考える必要があることに気づくべきであろう。、ではそれはなぜ異なるのか?
 たしかに慎重に年月をかけて考えるべき課題なのである。

拝受 徳運寺の古写経2009/12/28 17:50

『徳運寺の古写経―愛知県新城市徳運寺古写経調査報告書―』、国際仏教大学院大学学術フロンティア実行委員会、2009年12月。

『いとくら』第5号、2009年12月。

国際仏教大学院大学学術フロンティア実行委員会からいただいた。ありがとうございました。

前者には『法苑珠林』の伝来に関する考察も含まれている。『いとくら』はWebで読める。
http://www.icabs.ac.jp/frontia/

新収 歴史評論 717号2009/12/28 17:38

『歴史評論』 2010年1月号、校倉書房、2009年。

興味があったのは2本。

小関悠一郎、改革主体の学問受容と君主像
小川和也、越後長岡藩儒・秋山景山の天保改革構想

小関論文は上杉治憲の右腕である竹俣当綱の「学問の内容」と現実政治との関係性を探っている。

ちなみに中国史を専門とするはずの私が米沢藩上杉家に興味を持ったのは大学院時代に得たもの(目録学とか漢文とか)を活かそうということと、今いる場所になにか違和感を感じていたためだった。なんで今時、地方で漢文を読んで、外国史なのか、ということをふくめてである。

新収 汲古 第56号2009/12/24 22:50

『汲古』第56号、2009年12月。

論文12点。
韓昇、新発見隋代陰寿の墓誌
宮紀子、陳元靚(セイ)の『博聞録』について

韓昇論文は北朝末から隋代の正史に列伝がある人物の未公開(という)墓誌を取り上げている。

 北朝から隋の墓誌といえば前掲したエントリのような論文をいただいており、研究がさかんな分野である(もっと前にもあるはず)。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/12/02/4735901
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2008/01/10/2554491
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/12/11/4752057

 猫の生態と中国史に関心をもっている方の匿名ブログによると、陰寿の墓誌は「未公開」ではないんだそうです。そうですか。
 その知識はもう匿名でなく名乗られたようなものですね。

新収 室町時代古鈔本『論語集解』の研究2009/12/02 18:32

高橋智(著)『室町時代古鈔本『論語集解』の研究』、汲古書院、2008年。

高田さんから抜き刷りをいただいておもいだした。『論語』といえば、敦煌文献にも米沢藩旧蔵書にもある。ただ同じに見えて同じでないから難しい。以前購入したが、十分、読了できず山積みにしてあった中から大著をぬきだす。

拝受 『令集解』所引『論語義疏』の性格に関する諸問題 他2009/12/02 18:27

高田宗平、『令集解』所引『論語義疏』の性格に関する諸問題-「五常」の条をめぐって-、『総研大文化科学研究』第3号、2007年。
高田宗平、「『政事要略』所引『論語義疏』の性格について」. 『国立歴史民俗博物館研究報告』 第145集、2008年。

高田さんからいただいた。ありがとうございました。書誌学的な内容。

新収 江戸の本屋さん ほか2009/11/20 18:31

今田洋三『江戸の本屋さん-近世文化史の側面』(平凡社ライブラリー)、平凡社、2009年。

吉川忠夫・船山徹(訳注)『高僧伝』(2)(岩波文庫)、岩波書店、2009年。

拝受 杏雨書屋特別展示会図録2009/11/18 20:22

武田科学振興財団『第53回杏雨書屋特別展示会・和漢の本草書-中世以前の写本と刊本』、2009年。

 新たに重要文化財に指定された日本写本『新修本草巻第十五』のほか、歴代本草書の各種写本、版本の書影をおさめる。フルカラー総83ページの豪華カタログで、懇切丁寧な解説がつく。展示会場と講演会場で無償配布された。

 影印本でしかみれないような重文や自筆稿本がずらっとならぶ展示は圧巻だった。短期間ではあったが、敦煌秘笈本の展示には自説を添えさせていただく光栄を得た。

 本図録が少々不思議なのは奥付がなく、パンフレット的扱いになっていることである。図書館で探すのは結構むずかしい。ちなみにwebcatによると明治大学だけが全バックナンバーを所蔵する。

 この図録でとくに意義深いのは敦煌秘笈「新修本草序例」のカラー写真が収められていることである。写真は限定版の影片冊には載ったというものの広く写真がでまわったのはこれが最初である。

 私は医薬史にだけ関心をもっていたわけではないが、所蔵者からみれば、まず、これこそが関心ある資料であり、それをどう評価できるかがコレクション全体の価値に直結すると考えてきた。それだけにこの図録には感動があった。ついに敦煌秘笈本が、本草分野でもっとも権威ある図書館の重要な一点と認知されたからである。

 また、敦煌と『新修本草』について講演をさせていただく機会もえた。
 それも学識ありそうな方からお褒めの言葉をいただけたのはうれしい。
 http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2009/11/2-7c2b.html

 ともかく東洋学全体に関わる(にちがいない)パンドラの箱はついに開いた。