新収 桃源瑞仙年譜2007/04/26 00:06

今泉淑夫『桃源瑞仙年譜』春秋社、1993年。

 大学・大学院に籍をおいたほぼ全期間、『史記』の研究会に参加させてもらっていた。3,4時間とおして史料をよみつづけるゼミみたいなモノである。それにしては私は内容をみごとなまでにどんどん忘れるので、本無しでは人物談すらできないのだが、注釈者としての桃源瑞仙の名と独特な言い回し、解釈のユニークさは強く印象に残っていた。懐かしいとすらいってよい。

 その著、『史記抄』は『史記』に書かれている事象の解説だけでなく、論理の組み立てや表現をふまえて「史の筆法」をよみとくという史学の研究としてもなかなか高度なものである。年譜によるとその性格は僧侶というより、研究者といってよさそうである。
 政権による渡明への協力を拒んだあたりは五山僧として評価のわかれるところだが、彼は「史料を読みとく」ことに真髄があるとおもったのか、はたまたお勤めには価値は見いださなかったのか、真意は定かではないが、「読みとくこと」に時間を割いていたことはその著作からわかる。

そしてその五山の学問の一端が直江兼続という人物をとおして米沢に伝わった。単に内容を読んでいるときには全然意識していなかったのだが、米沢はそういう本があつめられた場所であった。
 以前、この年譜を引用した際はコピーを参照していたが再度見ることになったので購入。

新収 鮮卑考古学文化研究2007/04/26 00:41

孫危『鮮卑考古学文化研究』科学出版社、2007年。

ずいぶん前に発注していた本だとおもう。重複購入したかと思った。発刊がおそくなったのであろう。
 精読してないのでなんともいえないが、少々内容はおおざっぱにおもわれる。つっこみどころ満載だとおもうが、今は精読しない。
 とりあえず、鮮卑といい桃源といい、大学生時代の興味は紆余曲折をへて今につながっていることを実感させられる。

宣伝 特別展 直江兼続2007/04/26 21:55

図録『特別展 直江兼続』、米沢市上杉博物館、2007年4月。総頁数127頁。

図録の編集・執筆は上杉博物館の阿部哲人氏。
私も寄稿させていただいた。
 岩本篤志「直江兼続と漢籍-「米沢蔵書」と医書を中心に」。
実は拙稿は従来の説の要約と不確かな推測にすぎないという感じをもっている。この図録でみるべきは拙文ではない。
 国宝、重文がずらっとならぶ出展資料のカラー写真につけられた解説こそ見るべきで、書状などの文書と蔵書の解説を読んでいけばその生涯をじゅうぶんにたどることができる。しかもこの図録には文書は字が読めるサイズでフルカラー掲載されており、漢籍類もおおよそ書影をみることができる。その迫力には圧倒される。
 これこそ直江兼続の実像にせまるものであり、新潟・会津・米沢の中世を語る上でも欠くべからざる一冊である。もちろん、五山や足利学校といった関係にも濃密に言及されている。またご存じのように関ヶ原の戦いも「学校で教わったの」とは別の角度からみることができる。
 図録は通例、再版されないし、古書以外は流通にのらない。関心のある方は是非とも米沢にでむかれるか、博物館にといあわせ、この機会の購入をおすすめしたい。

 展示は前後期で一部異なるが、あわせて130点ほどが出品される。漢籍類(抄物もあるが)だけあげれば以下の通り。
 国宝・宋版『史記』、国宝・宋版『漢書』、国宝・宋版『後漢書』、『古文新宝後集抄』、『施氏七書講義』、『文選』(直江版)、『韻鏡』、『桃源史記抄』、『困学紀聞』、『霊棋経』、重文『備急千金要方』。
 
詳細はこちら。
http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/041kanetsugu.htm

<追記>2007.5.1
大河ドラマの件、地元の人(六日町、上越市、与板町、米沢市)には喜ばしい話だと思います。私は予測していなかった事態で唖然としています。ともかく、図録は学術的に価値あるモノですよ。1500円。