拝受 A Tibetan Register of Grain Delivery in Dunhuang in The Period Following Tibetan Domination2011/07/07 17:21

Akihiro SAKAJIRI,A Tibetan Register of Grain Delivery in Dunhuang in The Period Following Tibetan Domination:Pelliot Tibetain 1097,"Old Tibetan Documents Online Monograph Series vol.III",2011,3

坂尻彰宏さんからいただいた。ありがとうございました。
 原文は英語。これまでの研究史ではチベット勢力による敦煌占領期の「商用」または「給与」に関わるとみなされていた社会経済文書(P.T.1097、チベット語)の詳細な訳注とその機能分析。これをチベット占領が解けた後の時期の官倉からの穀物支出の記録と分析し、あわせて帰義軍期漢文文書(P.ch.3569)に官酒戸から役所に酒を納入する過程を確認。これらをともにみていくことで、敦煌における官酒戸が官庫から穀物の支出をうけ、酒を製造し、それを官庫におさめるという一連の過程が把握できるとする。
 別言語・複数言語が同時に使用される空間で協業して生活をきずきあげていく環境がどういうものか具体的に想像される。誤読ありましたらご容赦。

拝受 19世紀学研究 第5号 ほか2011/07/07 17:48

『19世紀学研究』 第5号、2011年3月。
 池田嘉郎「(書評)遅塚忠躬『史学概論』」

『資料学研究』第8号,2011年3月
 原 直史、地主史料からみた近世蒲原平野の米穀流通
 矢田俊文・卜部厚志、1751年越後高田地震による被害分布と震源域の再検討
 岩本篤志、鶴岡藩・新発田藩蔵書目録小考
 山内民博、朝鮮新式戸籍関連資料の基礎的研究(1)―忠清南道泰安郡新式戸籍関連資料―
 高橋秀樹、アガメムノンの夢―『イリアス』第2書に見る政治文化―

 個人的にいただいたもの等を優先的に紹介していたら紹介が異常に遅れた二冊。『19世紀学研究』は特集が2つ組まれ、多数の論文が掲載されるが、書評だけをチョイス。『史学概論』、これまで刊行されてきた歴史学概論のなかでとくによみやすく現代的な歴史学論。
 矢田・卜部「1751年越後高田地震による」は地図も付されており、たちどころに抜き刷りが捌ける可能性のある内容。

拝受 唐宋史料に見る『法』と『医』の接点 ほか2011/07/07 18:23

岡野誠、唐宋史料に見る『法』と『医』の接点、『杏雨』第14号、2011年6月。
岡野誠、旅順博物館・中国国家図書館における『唐律』『律疏』断片の原巻調査 、『内陸アジア出土4~12世紀の漢語・胡語文献の整理と研究』(科研基盤(C)研究成果報告書、平成22年度分冊)、2011年3月

岡野先生から送っていただいた、ありがとうございました。前者は、題名にあわせた三大話の構成になる講演録。まず、敦煌秘笈羽020の律疏面の内容の分析と表裏の構造を図示したうえで料紙の利用過程を分析。次に刑死者の解剖史、そして人部薬などにかかわるカニバリズムの歴史という構成。後者は前掲。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2011/06/23/5924656

拝受 法史学研究会会報 第15号2011/07/07 18:52

『法史学研究会会報』第15号-島田正郎先生追悼号、2011年3月。

 宮部香織、太宝令注釈書「古記」の解釈に見る律規定
 速水大、天聖厩牧令より見た折衝府の馬の管理
 宇都宮美生、洛陽の風俗と歴史
 溝口優樹、日本古代史料所引唐令の年次比定-坂上康俊説に関する一検討
 
岡野先生から送っていただいた、ありがとうございました(もちろん寄付いたします)。論説4点、叢説8点、文献目録2点、書評4点、島田先生追悼文が載る。うち以上4点に眼を通した。
 速水論文は前掲の一篇とあわせ、唐代折衝府(府兵制)研究に新たな史料環境が出現してきたことを意識させる。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2011/06/23/5924656
 宇都宮叢説は最新の洛陽ガイドとなっている。「隋唐洛陽城宮殿遺跡公園(仮称)」「曹休大将軍墓博物館(仮称)」などの紹介がなされており、西安でほぼ完成した巨大な都市型公園である大明宮国家遺跡公園や整備がすすむ漢長安城跡同様の状況が洛陽で進行しつつあるようだ。

拝受 西魏・北周霸府幕僚の基礎的考察 ほか2011/07/07 20:06

会田大輔、西魏・北周霸府幕僚の基礎的考察-幕僚の官名官品・序列を中心に、『明大アジア史論集』第15号、2011年3月。
会田大輔、日本における『帝王略論』の受容について-金沢文庫本を中心に、『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』(アジア遊学140)、勉誠出版、2011年4月。
前島佳孝、西魏宇文泰の官制構造について、『東洋史研究』第69号、2011年3月。
堀井裕之、崔民幹の事跡と『貞観氏族志』、『東アジア石刻研究』第3号、2011年3月。

前島さん、会田さん、堀井さんからいただいた、ありがとうございました。
『帝王略論』、前島、堀井論文は前掲。
 会田さんは次のようなものも書いておられた。 http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/07/12/5213287 次は敦煌文献研究という展開か。 http://www.kisc.meiji.ac.jp/~jkodaken/jpn/activity/conference/cf090828.html
 会田「西魏・北周霸府幕僚」はこれまであまり注目されてこなかった覇府内の官制構造を分析、今後北斉の分析を視野に入れるとする。
 前島論文はこれまで北朝史でしばしばおこなわれてきた有力者を中心とした人物把握でなく中央政府の構造を制度史的に完全に把握することの重要性をとき、先行研究の史料批判の手法、官制理解の不足を論難、宇文泰の官歴の意味さえ十分に把握されていなかったことを指摘、その分析から西魏北周史をみなおそうとする(紹介重複)。
 堀井論文は某シンポジウム発表の(失礼しました。勘違いでした。かつて某研究会で発表されたものですね)題材のようである。『貞観氏族史』で当初、第一等にあげられたものの、太宗によって第三等に降格された崔民幹(崔幹)の新出墓誌とその一族の墓域の変遷に注目、その事跡などの分析から太宗の氏族政策の意味を問い直す。この固有の事象に言及した先行研究として陳寅恪があげられていることに不自然さはない。ただ、前時代の研究を批判するのは容易なので、それを乗り越えた先にどういう見方を提供したかが肝心であろう。本論ではたしかに十分ではなく、続編に展開していくようである(以上修正)。

 いずれも正史や石刻史料が官職名の記録に比較的忠実でその数もあるという特性をふまえた研究。