新収 ハウス・オブ・ヤマナカ2011/07/14 17:55

朽木 ゆり子(著)『ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商』、新潮社、2011年3月。

序章
第一部 古美術商、大阪から世界へ
第二部 「世界の山中」の繁栄
第三部 山中商会の「解体」
終章

 国内外の美術館や博物館の展示品には寄贈されたり、発掘された国で保管してきたモノもあるが、20世紀初めの「探検隊」や植民地統治下期に持ち去られた文化財に由来するものもあるし、古美術商を経由して購入されたものもあり、その由来は様々である。

 山中商会とは東洋美術系の展示をよく見る人にはどこかで聞いたか見たことのあるはずの名前で、戦前まで世界に支店網をもった古美術業者であったが、資産のほとんどが国外にあって戦後は解体消滅してしまったため、その詳細はこれまで知られていなかったという。

 それまで主流だった対面販売でなく、会場で品物を展示してから販売する新しい手法で客を集め、某財閥のコレクション形成に一役かい、パリ万博(1867)以降の日本ブームに乗って海外進出、清朝崩壊後に中国美術にも手を広げ、経営を拡大したとされる

 北斉~隋唐期に造営された天竜山石窟など(第9章)でのくだりなどは当時の感覚はそれとしても、文化破壊そのものである。終章ではその一部が海外のオークションにかけられることになった2008年に、山西省の人が評価額の4倍で落札した様子の描写でしめくくられている。良質なノンフィクション。

関連論文(本書の著者から資料提供をうけ執筆されている)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ce/2008/ym01.pdf

amazon
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103289511/

称猫庵氏による紹介
http://syoubyouan.blogspot.com/2011/04/blog-post_09.html

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