新収 Le Musée Cernuschi2007/09/04 08:05

Société française de promotion artistique(ed.),“Connaissance des Arts:Le Musée Cernuschi”,Paris,2005.(写真左)
http://www.connaissancedesarts.com/

Paris-Musée,“Cernuschi Museum Guide”,Paris,2005.(写真右)

 セルニュスキ美術館はパリ市運営の東洋美術に関する美術館。2001-2004年に改装。コレクション対象は主に中国の青銅器、仏像、塑像、絵画(仏像、絵画には、日本のものもある)で、とくに中国のものが多い。セルニュスキ氏は19世紀の人だが、多くはその後の人の寄贈品や買い上げによっており、コレクションは近年出土のもの(?)にまでわたっている。

 自分の専門とする時代に目がいくのはしかたがないが、特に北朝仏や北魏から隋唐期の俑にはすぐれたものがおおいようである。たぶん展示のセンスがよいこともあるのだろう。小さな美術館ではあるが中国古代に関心があれば相当充実した展示となっている(宋、遼のものも少々あった)。B.Lauferの本で見たような印象的な俑のひとつがここにあった。

 ちなみに一番大きな展示物は江戸時代の作で目黒の某寺のものであったという仏像である。
 なお、私が訪れた際は、絵画類が展示されているであろう部屋には入れなかった。
 ギメ美術館とならんでアジア考古学では注目の美術館である。

新収 学びの世界2007/08/06 20:38

京都大学総合博物館、京都大学附属図書館、京都大学大学院文学研究科『学びの世界-中国文化と日本』(平成十四年度京都大学附属図書館公開展示会)、2002年10月。

1.出版文化のコスモロジー
2.幼学指南鈔とその周辺
3.学びの展開と継承

中国の書物がどのように日本の文化、教養に影響をあたえたのかをおもに館蔵資料によってたどった企画展の図録。

元明版および和刻本など漢籍の専門的解説書としてよめるほど濃密。

図書館職員、各学部教員、大学院生などスタッフなど数多くの連携が有効にはたらいているようにみうけられる。

(8/7追加)
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/tenjikai/2002/zuroku/index.html

Webの解説は図録と比すと短くなっており、また画像へのリンクも切れている。しかし今でも各本は京都大学電子図書館で閲覧できる。便利なだけでなく、京都大学図書館の蔵書の貴重さが実感できる。

新収 特別展 上杉謙信2007/05/01 03:09

伝国の杜・米沢市上杉博物館で「特別展 直江兼続」をみてきた。
 予想以上に注目を浴びる状況となったが、ともかく見事な展示だった。企画した博物館と学芸員の努力をあげてよいとおもうが、このような貴重な品々を護ってきた人々あってのものといってもよいだろう。
 実は前日には春日山城址と与板城址を一挙にめぐってきた。城址はあれど残されたものは少なく、多くはそっくり米沢に引き継がれたことがわかる。その意味で米沢は新潟の歴史の一部でもあるし、上杉家によってつながっているわけだ。

博物館で『特別展 上杉謙信』、2005年4月初刷、2006年7月二刷
を購入した。さきに通例、図録は再版されないと書いたが、かりに直江兼続の図録の初版がなくなっても、誤字・誤記(数カ所見つかっている)など修正の上で増刷されるかもしれない。

 ちなみに『特別展 上杉謙信』の編集も阿部哲人さんによるもので、直江兼続同様、力が入っている。テレビがどうのということに関わらず、持続的に丹念な仕事をされてきたことがうかがえる。
 ただ、図録『特別展 上杉景勝』も存在するはずなのだが、博物館のショップにはならんでいなかった。

展示 敦煌経と中国仏教美術2006/12/11 00:30

三井記念美術館「特別展 敦煌経と中国仏教美術」
2006年11月18日(土)~12月17日(日)

 敦煌文献関係者必見の展覧会である。真品のお墨付きの敦煌文献をみることができる。
 まず金銅仏の展示がある。選りすぐられている感じをうけた。特に静嘉堂蔵の北朝仏はなかなかで、芸大所蔵の陳の紀年がある銅像はたしかに珍品である。

 敦煌文献として25点の仏典の展示があった。これらは三井家が所蔵していたモノで、研究者が真品と見なしたものばかりである(藤枝晃「敦煌出土の長安宮廷写経」、『塚本博士頌寿記念仏教史学論集』pp.647-667、1961、赤尾栄慶『敦煌写本の書誌に関する調査研究-三井文庫所蔵本を中心として-』科研報告書、2002)。

 展示はいわゆる「長安宮廷写経」ものを中心とし、高い完成度と芸術品としての迫力をそなえている。なお、これらは戦後は2004年に三井文庫別館で公開されたのがはじめてで、今回2度目である。以前の展覧会時の図録『三井文庫別館蔵品図録 敦煌写経 北三井家』(三井文庫、2004)は少々写真が小さいのが難点であったが、今回の展示に際して、『三井記念美術館所蔵 精選敦煌写経』(三井文庫、2006、総26頁)が出版され、そこに展示中の尤品の一部原寸大写真をみることができる。

三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/index2.html

 ところで日本の個人や機関が所蔵する敦煌文献は相当数存在すると思われるのだが、なかなか公開されず、全貌の把握がされていない。それはかつて日本のほとんどの敦煌文献の真偽が疑われたことがあったためといわれている(あえてこの表現)。

 その意味で2004年に公開された三井蔵品は貴重であった。ただ徐々に状況はかわりつつある。相当数所蔵していると目されていた台東区書道博物館が2005年にその所蔵品をカラー図録として公開したのである。

 そして拙稿でもあきらかにしたように、まだまだ日本には未公開の敦煌文献が所蔵されている。どうやら贋物扱いされているらしいと聞いているが、すくなくとも「仏典」の基準で俗文書の価値をはかるのはナンセンスである。また、拙稿で論じたものの価値は覆らないと確信する。早期の公開をのぞむ。

李盛鐸旧蔵敦煌文書(大阪・某所蔵?、未公開)に関する拙稿
http://www.asahi-net.or.jp/~YW5A-IWMT/contents/china.htm

1.羽田記念館所蔵「西域出土文献写真」766・767『十六国春秋』考-李盛鐸旧蔵敦煌文献をめぐって
2.唐朝の医事政策と『新修本草』-李盛鐸将来本序例をてがかりとして
3.唐宋期における守庚申と盤上遊戯-『西域出土文献写真』所収「宵夜図考」

1,3はおそらく鑑定用に撮影されたとおぼしき白黒写真(京大蔵「西域出土文献写真」)をもちいた。2の新修本草の写真はある研究書の扉のみに掲載されている(これももともとは1、3と同類であったとみられる)。

展示 中国・日本の貴重書(静嘉堂文庫)2006/12/11 00:09

静嘉堂文庫の古典籍 第6回 「中国・日本の貴重書」
平成18年12月2日(土)~12月17日(日)

静嘉堂蔵の漢籍および国書の展示。東洋学の関係者にとっては宋元版を閲覧できる貴重な機会といってよい。
 重文指定をうけている展示物だけあげれば以下の通り。

周礼(南宋前期刊・蜀大字本)
説文解字(南宋初期刊、宋元逓修)
広韻(宋・孝宗朝初期刊)
漢書(宋・紹興刊)
皇朝編年綱目備要(南宋末期刊)
歴代故事(宋・嘉定5年序刊)
外台秘要方(宋・紹興刊)
白氏六帖事類集(北宋刊)
南華真経注疏(南宋刊)
李太白文集(南宋初期刊)
王右丞文集(南宋初期刊)

 重文ではないが資治通鑑(元刊明初修)、東京夢華録(元至大刊)などもあり、東洋史学を勉強している人には少なからず興味深い展示である。また国書中には徒然草の書写年代が確認できるものとしては最古の写本(重文)や平安時代書写の慈覚大師伝など、興味深いものもある。

 館内で販売している出版物として、宋元関係の図録(かなり興味のないものも含まれているので未購入)、静嘉堂所蔵の漢籍を説明した小冊子がある(以前購入)。なお、今回は宋元版の書影を絵はがきとしたもの1セット(11枚)を購入した。ちなみに、12月10日の岡本静嘉堂の敷地内は見事に紅葉していた。実は今回の展示は知らなかったのだが東大の小島さんにおしえてもらった。眼福だった。

静嘉堂文庫
http://www.seikado.or.jp/sub0201.htm