拝受 西魏・北周霸府幕僚の基礎的考察 ほか2011/07/07 20:06

会田大輔、西魏・北周霸府幕僚の基礎的考察-幕僚の官名官品・序列を中心に、『明大アジア史論集』第15号、2011年3月。
会田大輔、日本における『帝王略論』の受容について-金沢文庫本を中心に、『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』(アジア遊学140)、勉誠出版、2011年4月。
前島佳孝、西魏宇文泰の官制構造について、『東洋史研究』第69号、2011年3月。
堀井裕之、崔民幹の事跡と『貞観氏族志』、『東アジア石刻研究』第3号、2011年3月。

前島さん、会田さん、堀井さんからいただいた、ありがとうございました。
『帝王略論』、前島、堀井論文は前掲。
 会田さんは次のようなものも書いておられた。 http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/07/12/5213287 次は敦煌文献研究という展開か。 http://www.kisc.meiji.ac.jp/~jkodaken/jpn/activity/conference/cf090828.html
 会田「西魏・北周霸府幕僚」はこれまであまり注目されてこなかった覇府内の官制構造を分析、今後北斉の分析を視野に入れるとする。
 前島論文はこれまで北朝史でしばしばおこなわれてきた有力者を中心とした人物把握でなく中央政府の構造を制度史的に完全に把握することの重要性をとき、先行研究の史料批判の手法、官制理解の不足を論難、宇文泰の官歴の意味さえ十分に把握されていなかったことを指摘、その分析から西魏北周史をみなおそうとする(紹介重複)。
 堀井論文は某シンポジウム発表の(失礼しました。勘違いでした。かつて某研究会で発表されたものですね)題材のようである。『貞観氏族史』で当初、第一等にあげられたものの、太宗によって第三等に降格された崔民幹(崔幹)の新出墓誌とその一族の墓域の変遷に注目、その事跡などの分析から太宗の氏族政策の意味を問い直す。この固有の事象に言及した先行研究として陳寅恪があげられていることに不自然さはない。ただ、前時代の研究を批判するのは容易なので、それを乗り越えた先にどういう見方を提供したかが肝心であろう。本論ではたしかに十分ではなく、続編に展開していくようである(以上修正)。

 いずれも正史や石刻史料が官職名の記録に比較的忠実でその数もあるという特性をふまえた研究。

拝受 19世紀学研究 第5号 ほか2011/07/07 17:48

『19世紀学研究』 第5号、2011年3月。
 池田嘉郎「(書評)遅塚忠躬『史学概論』」

『資料学研究』第8号,2011年3月
 原 直史、地主史料からみた近世蒲原平野の米穀流通
 矢田俊文・卜部厚志、1751年越後高田地震による被害分布と震源域の再検討
 岩本篤志、鶴岡藩・新発田藩蔵書目録小考
 山内民博、朝鮮新式戸籍関連資料の基礎的研究(1)―忠清南道泰安郡新式戸籍関連資料―
 高橋秀樹、アガメムノンの夢―『イリアス』第2書に見る政治文化―

 個人的にいただいたもの等を優先的に紹介していたら紹介が異常に遅れた二冊。『19世紀学研究』は特集が2つ組まれ、多数の論文が掲載されるが、書評だけをチョイス。『史学概論』、これまで刊行されてきた歴史学概論のなかでとくによみやすく現代的な歴史学論。
 矢田・卜部「1751年越後高田地震による」は地図も付されており、たちどころに抜き刷りが捌ける可能性のある内容。

新刊 高田藩榊原家書目史料集成2011/06/17 23:18

朝倉治彦(監修)浅倉有子 岩本篤志(編集・解説) 花岡公貴(解説)『高田藩榊原家書目史料集成』全4巻、ゆまに書房、2011年3月。

http://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843335789

 「御書物虫曝帳」のほか、これまで公表されていなかった未公刊資料多数。目録学的見地から目録を編年的に排列構成し、榊原家の蔵書の聚散過程の見取り図となることを企図した。また「榊原家御系図」は榊原家略本紀にあたる基本史料で、今後研究に欠かせないものとなるであろう。
 第3巻(浅倉・岩本)と第4巻(花岡)に解説を、第3巻に資料索引をおさめ、とくに索引はゆまに書房編集部の念入りなご支援も得てきわめて詳細なものとなった。まず書誌学的な研究には役立つはずである。

第1巻『榊原家(村上)御書物虫曝帳』
 御書物虫曝帳

第2巻『榊原家(姫路・高田)書物目録』
 御書物入目録帳
 一ノ印長持並棚之内惣体外ニ有之御書物帳
 箪笥入御書物帳
 御書物虫干目録
 播州姫路城図
 君公御蔵目録
 御書物役心覚書
 本丸御殿絵図
 高田修道館絵図

第3冊『近代の榊原家・修道館関係目録』
 修道館蔵皇典書目
 御宝蔵納御記録覚帳
 原田家古文書目録
 榊神社古書類目録草稿
 室井常領翁寄付古書類目録草稿
 清水広博翁寄付古書類目録草稿
 清水広博翁家門先代ヨリ伝来殿様御書目録
 清水広博翁着用衣類遺物目録
 庄田家寄付採納願付目録
 修道館文庫目録
 榊原政敬家蔵書目録
 榊原政春氏所蔵図書目録
 榊原家ヨリ購入ノ図書目録

第4冊『榊原家御系図』
 榊原家御系図

 浅倉、花岡先生は日本近世史専攻でとくに高田藩に関してはエキスパートである。日本史、国文の研究者にはもちろん、また江戸時代の東アジア交流史にも有用だと思う。
 
関連情報
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/06/13/5158376
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/09/03/4559730

[正誤] (今後も追加していきます)

索引 主国合結記 → 主図合結記

新収 稀見唐代天文史料三種2011/06/12 21:51

高柯立(選編)『稀見唐代天文史料三種』上中下、国家図書館出版社、2011年1月。

『天文要録』『天地瑞祥志』『譙子五行志』を影印でおさめる。前二者は日本の研究者の研究で知られる日本蔵写本。

拝受 『弘決外典鈔』に関する諸問題―『論語義疏』の引用を中心に ほか2011/05/31 20:13

高田宗平、日本古代『論語義疏』受容史初探、『国立歴史民俗博物館研究報告』第163集、2011年3月。
高田宗平、『弘決外典鈔』に関する諸問題―『論語義疏』の引用を中心に―、『日本漢文学研究』第6号、2011年3月。
高田宗平、日本古典籍所引『論語義疏』の本文について、『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』、勉誠出版、2011年4月。

高田さんからいただいた。『論語義疏』の研究をいっそうふかめておられるようである。いただいてからずいぶん時間がたってしまった。そういえば『弘決外典鈔』は本草でも見ておくべき本だった。

真柳 誠「金沢文庫の医学古文書」       
http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/paper04/shiryoukan/me172.html

以前、高田さんからいただいた抜刷。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/05/26/5115000
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/12/02/4735904

以下は購入書。

『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』(アジア遊学140)、勉誠出版、2011年4月。

目次はこちら。
 http://www.bensey.co.jp/book/2385.html
アジア遊学にはこれまでも何度か「漢籍」の企画モノがある。その続きという感じである。執筆者のおおくが明治大と大東文化大に関わる先生方、院生で構成されているのが特徴的。
 おもしろそうなモノを取り出してみると次のような論文がある。

山口謠司、『秘府略』紙背に見える『尚書』の本文
影山輝國、旧鈔本『論語義疏』―儒蔵本『論語義疏』における校訂の問題
船田想、猿投神社所蔵写本『史記集解』本文の系統について
池田昌広、西域出土の古鈔本からみた『漢書』顔師古本
洲脇武志、『古簡集影』所収の『後漢書』旧鈔本
会田大輔、日本における『帝王略論』の受容について―金沢文庫本を中心に
田中良明、前田尊経閣本『天文要録』について
土屋聡、唐鈔本『世説新書』について

新収 敦煌吐魯番学論稿 他2011/05/16 17:52

柴剣虹(著)『敦煌吐魯番学論稿』、淅江教育出版社、2000年5月。
方広錩(著)『方広錩敦煌遺書散論』、上海古籍出版社、2010年2月。

 これも昨年度購入したうちの2冊。前者は以前購入したつもりが手元にみあたらないので買い漏らしていたのだと思う。文学的内容の文献を主体に扱う。

 後者は仏教文献を主体にあつかうが、敦煌文献全体に関わる論考が少なくない。方広錩氏は敦煌文献については廃棄説をとる研究者であるが、これまで提示していた論は後の研究者に批判されていた点が少なくなかった。本書にはそれを改稿したものがふくまれる。未精読。

まだまだいただいたものがたくさんあるが、その前に購入記録。
もちろん購入してずいぶん時間がたったのに記録してないものもまだまだあるのだが。

新収 博物学と書物の東アジア ほか2011/05/16 17:42

高津孝(著)『博物学と書物の東アジア-薩摩・琉球と海域交流』、榕樹書林、2010年8月。
斯道文庫(編)『図説 書誌学-古典籍を学ぶ』、勉誠出版、2010年12月。
吉田歓(著)『古代の都はどうつくられたかー中国・日本・朝鮮・渤海』、吉川弘文館、2011年2月。

昨年度、購入した書籍の山の中から。いずれも面白い本なのだが読了するにはちょっと時間が。とりあえず記録。

新収 筆墨精神-中国書画の世界2011/01/12 19:16

『筆墨精神-中国書画の世界』京都国立博物館、2011年。

現在、京都国立博物館で開かれている特別展覧会の図録。
展示の中心になっている上野コレクションは内藤湖南の橋渡しのもと、羅振玉から譲渡されたものが含まれており、コレクションとしても体系性をもっているということである。

見たかったのは「典籍の世界-テキストを写す」の部分。
一見して晋代から北朝、または唐写本とわかるものが数点あり壮観。
 書道博物館の『三国志』呉志第十二残巻と接続する上野コレクション本『三国志』呉志第十二残巻の二つがあわせて掲載されている。解説によれば出所は同じ。以前、某論文で見たことのある名前がある。なるほど。

新収 汲古 第58号2010/12/19 04:05

『汲古』第58号、2010年12月。
 河野貴美子、北京大学図書館蔵余嘉錫校『弘決外典抄』について
 会田大輔、『魏鄭公諫録』の成立について―『明文抄』所引『魏文貞故事』との比較を通じて

ともに書誌学、目録学的にスタンダードな手法を用いた新しい研究。

 話をしたことがあるせいもあるが、会田さんの狙いはよくわかる。ここ2,3年で志向を変えたように思えるが、個人的にはこちらが予測できない新展開を期待したい。

 数日又は数週間前に、抜き刷りや雑誌、さらには御著書をいただいたり、自分の研究にきわめてインパクトの大きな大著を購入したりもしているのだが、丁寧に読まなくてはとおもっていると、読む時間がなくて、まだここに紹介できていない。

 すでにこのサイトをみている方はご存じのように、ネット上には魏晋南北朝隋唐時代関係だけでも鎖(リンク)をつけがたい猫的(無記名、自由人な)読書ブログがいくつもある。読書記録とは違う方向のブログもあるし、著名な研究者なのに匿名なサイトも、研究者ではない人もいるようだ。これからもリンクしませんけど、よろしく。

新収 本を千年伝える ほか2010/10/28 18:10

藤本孝一(著)『本を千年伝える―冷泉家藏書の文化史』朝日新聞出版、2010年10月。
冷泉為人(著)『冷泉家・蔵番ものがたり―「和歌の家」千年をひもとく』NHKブックス、2009年8月。

 前者は長年冷泉家蔵書の整理に関わってきた研究者によるもの。書誌学とは異なる古文書学的な視点を応用した写本研究の立場から冷泉家蔵書の読み解きかたを提示している。基本的に自分には共感できる見方で、概説書ながら得るところが多い。