新収 中国敦煌学論著総目2011/07/14 19:06

樊錦詩・李国・楊富学(編)『中国敦煌学論著総目』甘粛人民出版社、2010年8月。

1900年から2007年までの中国語で書かれた敦煌学関連の記事や、論文、著書の索引。項目別に排列されており、著者名索引がつく。CNKIで代替できるような気もしたが購入してみた。

姜伯勤(著)『唐五代敦煌寺戸制度(増訂版)』中国人民大学出版社、2011年2月。

増訂されてない版もすでに購入済みだったはず。

新収 唐代官修史籍考 ほか2011/07/13 18:56

杜希徳(著)黄宝華(訳)『唐代官修史籍考』上海古籍出版社、2010年11月。
余嘉錫(著)『漢魏両晋南北朝史叢考』国家図書館出版社、2010年12月。

前者はDenis C.Twitchett,"The Writing of Official History under the Tang"、1992年の翻訳。後者は巻頭におさめられた『太史公書』亡篇考など、おもしろい考証モノを含む。

 このジャンルの書籍をみるといろいろ思い起こすことがある。
 自分は一応南北朝仏教史を専門のひとつとしていた先生のもとで卒論を書き、大学院の指導教員のもとで出土資料文献の研究にふれると同時に、内陸アジア史に視野をむける重要性を知り、平行して4年間、目録学の授業(出身大学院ではその短期間にしか存在しない授業であったと思う)を受けた。『史記會注考證』を読む研究会には学部生時代から関東を離れるまで都合10年くらいいた。北朝政治史で修論を書こうとしていた(書いた)自分にとって、目録学や『史記』がどう役立つのかは深く考えないでいたが、要領がよいわけでもたいして優秀でもないので研究発表や読み手になるたびに冷や汗をかくことになった。そしてその後まもなく性懲りもなく全く性格の異なる学内外3,4つの小研究会に同時に属した。
 今振り返れば、そうしたあれこれがないまぜになって興味のもとをつくり、(傍目にわかりにくい)現在につながったのだと思う。またそれらを自分の中で消化していくことに著しく時間がかかった(かかっている)のだと思う。
 最初に手がけた論文の分野は北朝史だったが、その場には先達はいてもそればかりをやっている専家がいたわけではなく、その後に展開する中国医術史の専家も身近にはいなかった。ただいずれの先生も一口で言い表せる時代の専家ではなかったから、むしろ単一時代単一分野にしぼらないで、常識ではつながらないものをつないでいくことが自分の環境にかなった考え方であると思って今に至った。
 前者は原書1992年、後者は1963年刊行であるから、いずれもその頃でも入手可能だったし、ともに同著者の別の著書か論文をかじっていたはずだが、この二冊は読んだ記憶はない。
 拾い読みをしつつ、初心をおもいおこし、再度自分が眼を向けてきた分野を見つめ直してみることにしたい。

拝受 19世紀学研究 第5号 ほか2011/07/07 17:48

『19世紀学研究』 第5号、2011年3月。
 池田嘉郎「(書評)遅塚忠躬『史学概論』」

『資料学研究』第8号,2011年3月
 原 直史、地主史料からみた近世蒲原平野の米穀流通
 矢田俊文・卜部厚志、1751年越後高田地震による被害分布と震源域の再検討
 岩本篤志、鶴岡藩・新発田藩蔵書目録小考
 山内民博、朝鮮新式戸籍関連資料の基礎的研究(1)―忠清南道泰安郡新式戸籍関連資料―
 高橋秀樹、アガメムノンの夢―『イリアス』第2書に見る政治文化―

 個人的にいただいたもの等を優先的に紹介していたら紹介が異常に遅れた二冊。『19世紀学研究』は特集が2つ組まれ、多数の論文が掲載されるが、書評だけをチョイス。『史学概論』、これまで刊行されてきた歴史学概論のなかでとくによみやすく現代的な歴史学論。
 矢田・卜部「1751年越後高田地震による」は地図も付されており、たちどころに抜き刷りが捌ける可能性のある内容。

新収 史学雑誌 第120編第5号2011/06/21 20:46

『史学雑誌』第120編第5号、2010年の歴史学界、2011年6月。

 毎年6月に刊行される回顧と展望が既に到着している。
 先のエントリは3月末くらいに書くつもりのことだったので、その間2か月にいただいた論文を後回しにするのはもうしわけないが、極力早く時計の針を修正するということで先に記録しておく。

 回顧と・・・の評者は若手研究者にはわりにあわない大変な仕事である。どうも2,3箇所の分野を見るとあまりご自身では情報を集めなかったのか情報収集不足の観があったりして脱力感のある分野とそうでない分野が交錯している。ところによっては評者の論文の書き方や出身ゼミの学風、価値観が評文に(良い意味でも悪い意味でも)でていたりと興味深い。

(アクセスが増えた。一般的に書くには粗すぎる内容もあったので、要点を絞った)
 
 なお、個別の話にはなるが、贋物であるという疑いさえあった五胡関係の内容を持つ敦煌文献の真贋、年代、出土資料の性格を論じた拙稿を五胡時代の「単なる史料批判、新出資料の紹介といった方法論」と位置づけ、全く異なるレベルで編集されている佚文集とあわせて、将来的に「五胡時代の国家に関する包括的理論」をもとめたい、とする評文には驚いた。佚文集の趣旨とも拙稿の論点とも関係がない。

 そもそも敦煌文献(典籍)に書かれていた内容を史料として扱うということと敦煌文献としての資料的性格を論じることはわけて考えなくてはならない(敦煌「文書」の場合は一体で考えることが多い)。該当資料は史料としての価値は決して高いとはいえず、拙稿ではその内容をふまえつつ敦煌文献としての資料的性格を論じたのである。目的はそこにあって「五胡」にない。また年代不詳の典籍断片の年代、書名を確定していく作業は「史料批判」ではないであろう。

 佚文集はどちらかというと自分は史学史的興味と史料参照に便利であることから、参画し編集したもので、それを用いてさえ五胡史を描くのには多くの難題がある。出土文献も稀少であって中国史でもっとも扱いづらい領域のひとつ(だから論文も少ない)だと思っている。
 また佚文集や拙稿(前稿がある)をあとで発表された佚文集関係者の研究の補足と理解されているようだが、研究史としては扱いがまったく逆である。

 ただ、包括的理論や「王朝の制度思想全体を論じる視点」を至上の目的とする「評者が属する世界」があるのだろう。外にいる私にもその現代的意義をまずお教え願いたい。

 私は現在の魏晋南北朝史においては、まず、編纂史料以外の資料を史料としてもちいていく分析手法の開拓がもとめられていると思っているし、その点は数年前の拙稿に示したとおりである。
 編纂史料から抽出された史実や世界観を天下国家としてまとめるのではなく、その外にある資料を論じることで編纂史料の編纂者の意図やその限界がうきぼりにしていかなくてはならないのではないか。そしてそれだけの資料がでてきている。
 そのように他時代と同様の水準まで編纂史書偏重の状況が脱却できたならば、その先の大きなテーマの一つとして国家論もあってよいとは思う。
 
 ただこうした評がでてくる背景には、これまでの出土資料や史料整理による魏晋南北朝期の研究が一定の世界像をえがきだしてこなかったことへの不信があるのだろうとうけとめた。

新刊 高田藩榊原家書目史料集成2011/06/17 23:18

朝倉治彦(監修)浅倉有子 岩本篤志(編集・解説) 花岡公貴(解説)『高田藩榊原家書目史料集成』全4巻、ゆまに書房、2011年3月。

http://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843335789

 「御書物虫曝帳」のほか、これまで公表されていなかった未公刊資料多数。目録学的見地から目録を編年的に排列構成し、榊原家の蔵書の聚散過程の見取り図となることを企図した。また「榊原家御系図」は榊原家略本紀にあたる基本史料で、今後研究に欠かせないものとなるであろう。
 第3巻(浅倉・岩本)と第4巻(花岡)に解説を、第3巻に資料索引をおさめ、とくに索引はゆまに書房編集部の念入りなご支援も得てきわめて詳細なものとなった。まず書誌学的な研究には役立つはずである。

第1巻『榊原家(村上)御書物虫曝帳』
 御書物虫曝帳

第2巻『榊原家(姫路・高田)書物目録』
 御書物入目録帳
 一ノ印長持並棚之内惣体外ニ有之御書物帳
 箪笥入御書物帳
 御書物虫干目録
 播州姫路城図
 君公御蔵目録
 御書物役心覚書
 本丸御殿絵図
 高田修道館絵図

第3冊『近代の榊原家・修道館関係目録』
 修道館蔵皇典書目
 御宝蔵納御記録覚帳
 原田家古文書目録
 榊神社古書類目録草稿
 室井常領翁寄付古書類目録草稿
 清水広博翁寄付古書類目録草稿
 清水広博翁家門先代ヨリ伝来殿様御書目録
 清水広博翁着用衣類遺物目録
 庄田家寄付採納願付目録
 修道館文庫目録
 榊原政敬家蔵書目録
 榊原政春氏所蔵図書目録
 榊原家ヨリ購入ノ図書目録

第4冊『榊原家御系図』
 榊原家御系図

 浅倉、花岡先生は日本近世史専攻でとくに高田藩に関してはエキスパートである。日本史、国文の研究者にはもちろん、また江戸時代の東アジア交流史にも有用だと思う。
 
関連情報
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/06/13/5158376
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/09/03/4559730

[正誤] (今後も追加していきます)

索引 主国合結記 → 主図合結記

拝受 『弘決外典鈔』に関する諸問題―『論語義疏』の引用を中心に ほか2011/05/31 20:13

高田宗平、日本古代『論語義疏』受容史初探、『国立歴史民俗博物館研究報告』第163集、2011年3月。
高田宗平、『弘決外典鈔』に関する諸問題―『論語義疏』の引用を中心に―、『日本漢文学研究』第6号、2011年3月。
高田宗平、日本古典籍所引『論語義疏』の本文について、『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』、勉誠出版、2011年4月。

高田さんからいただいた。『論語義疏』の研究をいっそうふかめておられるようである。いただいてからずいぶん時間がたってしまった。そういえば『弘決外典鈔』は本草でも見ておくべき本だった。

真柳 誠「金沢文庫の医学古文書」       
http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/paper04/shiryoukan/me172.html

以前、高田さんからいただいた抜刷。
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2010/05/26/5115000
http://iwamoto.asablo.jp/blog/2009/12/02/4735904

以下は購入書。

『旧鈔本の世界―漢籍受容のタイムカプセル―』(アジア遊学140)、勉誠出版、2011年4月。

目次はこちら。
 http://www.bensey.co.jp/book/2385.html
アジア遊学にはこれまでも何度か「漢籍」の企画モノがある。その続きという感じである。執筆者のおおくが明治大と大東文化大に関わる先生方、院生で構成されているのが特徴的。
 おもしろそうなモノを取り出してみると次のような論文がある。

山口謠司、『秘府略』紙背に見える『尚書』の本文
影山輝國、旧鈔本『論語義疏』―儒蔵本『論語義疏』における校訂の問題
船田想、猿投神社所蔵写本『史記集解』本文の系統について
池田昌広、西域出土の古鈔本からみた『漢書』顔師古本
洲脇武志、『古簡集影』所収の『後漢書』旧鈔本
会田大輔、日本における『帝王略論』の受容について―金沢文庫本を中心に
田中良明、前田尊経閣本『天文要録』について
土屋聡、唐鈔本『世説新書』について

拝受 敦煌寫本研究 第5号2011/05/10 17:23

『敦煌寫本研究』第5号、京都大学人文科学研究所「西陲発現中国中世写本研究班」、2011年3月

編集にあたられた高田先生からいただいた。ありがとうございました。またお手数おかけしました。
 なお原文、雑誌名はすべて正字表記だが、ここでは、誌名以外、通行字体にさせていただいた。敦煌秘笈関連の研究を中心に興味深い論考がならぶ。

高田時雄、李盛鐸旧蔵写本《駅程記》初探 
劉永明、敦煌占卜文書中的鬼神信仰研究
岩本篤志、敦煌占怪書「百恠図」考-杏雨書屋敦煌秘笈本とフランス国立図書館蔵本の関係を中心に  
玄幸子、羽39Vを中心とした変文資料の再検討
赤木崇敏、唐代敦煌県勘印簿 羽61,BD11177,BD11178,BD11180考
石立善、吐魯番出土儒家経籍残巻考異
藤井律之、Dh17449「夾注本黄石公三略」小考
荒見泰史、敦煌本《受八関斎戒文》写本の基礎的研究
永田知之、『国清百録』管窺――書札文定型化の資料として
山口正晃、『十方千五百仏名経』全文復元の試み
岩尾一史、チベット支配初期の敦煌史に関する新史料-IOLTibJ915とIOLTib292(B)
山本孝子、僧尼書儀に関する二、三の問題-敦煌発見の吉凶書儀を中心として   
趙青山、写経題記所反映的古人病患理念――以敦煌写経為中心
高井龍、「金剛醜女縁」写本の基礎的研究

 第5号はWeb上で公開されている。収録論文名すべてをあげたのは拙稿が含まれるからではなく(笑)、入力の省力化ができたためである。 
 http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~takata/xichui.html
 
 ちなみに過去未来一切の著述を電子化する権利を現勤務先等に付与するよう要求するところもあるが(!)、雑誌刊行者が執筆者の了解の下、電子データを公開していくのが自然な流れであろう。

拝受 陰陽五行のサイエンス 思想編2011/05/02 20:16

武田時昌(編)『陰陽五行のサイエンス 思想編』京都大学人文科学研究所、2011年2月。

武田先生からいただいた。ありがとうございました。いただいてからずいぶん時間がたってしまった。函入上製本ということで書影は省略させていただく。
 3部構成で18篇が収録される。興味深い論考がずらりと並ぶ。ネットで目次をさがしてみたのだけど、まだ無い。少々、全部入力するのはしんどいので、まずは構成(著者名:追加)を紹介。

第一部 陰陽五行説のパラダイム形成
 武田時昌、森村謙一、古藤友子、大形徹、清水浩子、宇佐美文理

第二部 道教、医術、占術のなかの陰陽五行説
 加藤千恵、金志玹、多田伊織、閻淑珍、宮崎順子、佐藤実

第三部 陰陽五行説の日本的展開
 坂出祥伸、佐野誠子、水口幹記、熊野弘子、舘野正美、水野杏紀

後で論文タイトルを書き足したい。

 私事:
 Firefox4にアップデートしてみたらすこぶる調子が悪いので、Chromeに乗り換え。
 ここのところパソコンの各所に不調がでてきて能率があがらず、現用の数台はHDDやめて全部SSDに換装してようやく快調になった。要はアップデートを繰り返すうちにOSが重くなり、ディスクの断片化もすすんでいたことが各所に影響していたようである。それで環境はよくなったはずなのだが、Firefox4は機種によって挙動が違うらしい。

 いただきものや眼を通していない雑誌が山積みとなった。書くスケジュールもついに来年度にまで食い込んでしまった。ともかくモノ覚えが悪いので、最初から勉強しなおしたいこともたくさんあるのだが、さて、どうしよう。

新収 概説中国思想史2011/02/23 18:24

湯浅邦弘(著)『概説中国思想史』、ミネルヴァ書房、2010年10月

 これまでの「思想史」とは違う斬新な視角で組まれている。とくに第14章以降に文字学、新出土文献、目録学、史学思想、民間信仰、軍事思想、日本漢学などのジャンルがたてられているのがユニーク。歴史学研究者も一見の価値がある。また編者自身の研究蓄積がうまくいかされている。

目次はこちら
http://www.minervashobo.co.jp/book/b75808.html

 刊行されてすぐに購入したのだが、すでに4ヶ月がたってしまった。その間、やることがずいぶんあり、海外にも何度も出かけ、もう1年くらいすぎたような感覚がある。こまるのは1ヶ月ほど前から突如めまいがあることで、少し休む必要がありそうだ。禁酒・禁コーヒー中で能率が上がらないこと甚だしい。

拝受 東方学報 京都 第85冊2011/01/12 18:49

『東方学報 京都』 第85冊、京都大学人文科学研究所、2010年3月。

創立80周年記念号で28本の論文が載る。
 現段階で自分が関心ある論文だけをあげてみる。

藤井律之、満と解-晋南朝人事制度の再検討に向けて
向井佑介、北魏平城時代における墓制の変容
古勝隆一、『隋書』經籍志史部と『史通』雑述編
麥谷邦夫、呉筠事跡考
安藤房枝、雲崗第六窟の図像構成について-仏伝図像に焦点をあてて
石川禎浩、眠れる獅子(睡獅)と梁啓超
稲葉穣、泥孰攷

南北朝隋唐時代に関するもの以外の「睡獅」は謎解きのような構成にひきこまれた。「泥孰」は音韻的に近いNezakという称号に関する同定を論じる。ササン朝と西突厥の動向に深く関わる内容。